里山の自然とそこに住む人たちからの学びをアートに DEAI by Bubb & Gravityfree with KEEN

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里山の自然とそこに住む人たちからの学びをアートに DEAI by Bubb & Gravityfree with KEEN

空間工作人のBubbとライブペインティングユニットのGravityfree。そしてフットウェアブランドの <KEEN>。三者のプランによって、新潟県津南町の集落に2012年に誕生した「DEAI」。それから3年。毎年少しずつ進化を遂げていた「DEAI」にアートトリエンナーレとして2回目の夏がやってくる。人と人、人と自然、過去と未来が邂逅する場所になる。

文・菊地 崇/写真・依田恭司郎・林 大輔

2回目の夏。

新潟県越後妻有地域の広大な土地を美術館に見立て、〈大地の芸術祭〉がスタートしたのは2000年。トリエンナーレとして、今年6回目の開催になる。

空間工作人のBubbとライブペインティングユニットのGravityfreeが手がけたのが「DEAI」。何年も人が住まなくなっていた空き家をリノベーションしたこの作品で〈大地の芸術祭〉に初参加したのは、前回の2012年のことだった。



「参加を決める前にまず芸術祭を見たいということになって、Bubbさんと越後妻有に行って、見て回ったんですよね。『脱皮する家』に寄ったときに、作品としてのおもしろさはもちろんなんですが、そこにいたおばちゃんたちとの時間が、とても大切なものだって気がしたんです。お茶とか漬け物を出してくれて、なんだかんだ話をして。アートを通して町おこしをする。そんなことに、チャレンジしてみたいと思ったんです」とGravityfreeのdjow。

「参加することが決まって、どういうところが希望ですかって訊ねられたんですよね。とにかく景色がいいところって俺が希望を出して。なおかつ、できれば古民家がいい、と。そして2011年の暮れに、はじめて津南町の太田新田に来て、空き家になっていたこの家を見ました。大雪のなかということもあって、そのときは全然つかめなかったんですね。2012年の春に作りはじめたんだけど、『やっぱりここで良かった』と思えるようになっていたんです」とBubb。

太田新田は、人口80人程度の小さな集落だ。お店も自動販売機もない。小学校もない。「日本の秘境100選」にも選ばれた秋山郷の入口でもある。津南のなかでも僻地とされる地域だ。住んでいる人たちの平均年齢も高い。2012年夏、その太田新田で「DEAI by Bubb & Gravityfree with KEEN」は公開された。



太田新田での学び。

3年に一度の開催ではあるものの、それ以外の期間は公開されない、というわけではない。毎年「DEAI」は更新されていった。BubbとGravityfreeは幾度となく太田新田を訪れ、太田新田や津南の人たちと交流を深めていった。2010年に静岡県富士宮でスタートした3人がオーガナイズするフェス〈ARTh camp〉も、2013年と2014年には津南に会場を移して開催された。

「ものを知ることも、ものを作る技術も、アートも、いろいろな出逢いからはじまっていく。もちろん人と人の出逢いも、いろんなものへと繋がっていく。その意味で、いろんなことと出逢ったほうがいいし、いろんなことを知ったほうが、人生が豊かになるだろう。そんな想いがあって『DEAI(出逢い)』というテーマになったんです。そして積み重ねていくひとつの場として、この『DEAI』が成立していけばいい。そんな想いからスタートしました」とGravityfreeの8g。

「出逢いって、やっぱり大事だよ。俺は口癖で『出逢ったら最後まで』と誰にでも言っちゃうんだけど(笑)。この3人が出逢っていなかったら、『DEAI』も生まれていなかったかもしれないし」とBubb。

何かに出逢うことによって、次に繋がっていく。「DEAI」でのその何かとは、3人にとって、この地域に住んでいる人であり、住んでいる人が抱えている文化であり、冬には豪雪地帯になる豊かな自然だった。



「芸術祭の作品として『DEAI』を作ってきたわけだけど、俺たちが太田新田に通うことで得た一番の財産は、人との出逢いだったね。深い繋がりを持てる人と何人も出逢えたなぁと思っていて。そういう意味では田舎ができたような感覚です。自分たちにとっての大切な場所」とBubb。

「都会じゃないところでの暮らし。都会に比べれば不自由だって感じる人がいるかもしれない。僕らにとっては、それで助かったのかなって思っています。自分たちで持っていた知識だったり、ここに長く住んでいる人の智慧だったりが、創造することに繋がっていったんですよね」とdjow。

作品を作るために、何カ月にも渡って滞在する。一過性のものではなく、「DEAI」という居場所を作ること。みんなが出逢う場所を提供すること。フェスやイベントで、デコレーションやライブペインティングという結果を短期間で残すのではなく、暮らしということに密接していった結果として「DEAI」は生まれていったのかもしれない。

「学びの場だったような気がするなぁ。フェスなどのデコレーションや店舗の内装など、作っているものは同じようなものかもしれないけど、この場所だからこその発見が多かったね。自然もそうだし農業もそう。食に繋がる農業は、大切な産業というだけではなく、人間には重要なもの。ここにいないとわからないことがいっぱいあるし、テレビなどのメディアからの情報ではわかり得ないことが、たくさん学べたと思う。都市に住んでいて、わかっていないことっていっぱいあるよ」とBubb。



「通い出したときから、食べ物に関して、すごく感謝するようになりました」とdjow。

2012年は、空き家の内部を解体することから実際の作業ははじまった。けれどそれ以前にやっていたのが、空き家の横にあるスペースに野菜の苗を植えること。それは今年も同じだ。建物の周りを囲む足場が設営される前に、まずは土を起こし、野菜の苗を植えた。トマト、ナス、ピーマン、獅子唐、ゴーヤ…。夏には実がなる野菜たち。

「循環農法でやろうと思ってマルチを買ってきたら、津南で自然農を営んでいる農家さんから『そんなの、かけないでしょう』と言われてしまって。これから成長して、実となって食べさせていただく。自分で作ったものを食べるっていうことが楽しみのひとつなんですよ。買ったものよりも、確実においしく感じるし。ましてや農薬も使っていないから安全だし」とdjow。

「野菜を作ることも労力として絶対にあるわけ。でも、その見返りじゃないけどご褒美があるんだよね。水道もあるけど、山の上に行けば素晴らしい湧き水が出ているし。自分にできることってなんだろう。それを毎日考えていますよ」とBubb。



自然のなかでの時間の流れ。

世界有数の豪雪地帯の越後妻有では、11月初旬に初雪が降り4月に雪解けを迎える。なかでも太田新田は雪が深く、積雪が3メートルを超えることも少なくない。2階にまで届きそうな雪の壁。雪がない季節と雪がある季節では、風景も、そこでの暮らしも一変する。

3人は四季を通して何度も津南を訪れている。2011年から足掛け4年。津南の人と会話し、その会話のなかからいろんなことを学んでいった。

今年、「DEAI」はひとつのゴールを迎える。それは完成ではないかもしれない。この家のオーナーの意向は「住める状態にしておくこと」。〈大地の芸術祭〉に出品される作品ではあるものの、住むことができなくなってしまった空き家ではない。

「Gravityfreeが描くアートにしても、俺が作る空間工作にしても、期日というゴールが決められている。それに向かって、決められた時間のなかで最善を尽くす。たぶん、芸術祭がはじまって、俺たちの手が加えられなくなったら、ああしておけば良かったという想いは絶対に出てきてしまう。でもね、やりきったという感覚を最後に持てるようなワークはしなければと思っている。過ぎてしまうと4年っていうのは短いよね。あっという間ではないけれど、こんなに新潟に通うなんて思っていなかったから。飯を作って、寝泊まりして。こんなに長くひとつの作品、ひとつの場所と関わっているのは人生のなかではじめてですよ」とBubb。
「僕にとっては4年間は長かったですねぇ。人生の10分の1くらいの時間ですから(笑)」とdjow。



「呼ばれて絵を描きに行くときは、人が集まるところばかりじゃないですか。太田新田にいるときは、お店も近くにないし、ご飯も自分たちで作らなきゃならない。夜は真っ暗になるし朝は早い。東京に戻って、ここのサイクルで生活しようと思っても難しい。都市とは違う充実感があるんですよね」と8g。

大都市にいれば、夜の暗さがわからなくなってしまうのかもしれない。風の心地よさがわからなくなってしまうのかもしれない。日の出や日の入りを知らないまま暮らしが回っていってしまうかもしれない。建物のなかにいれば暑さや寒さもわからなくなってしまうかもしれない。けれど太田新田にいれば、それらは自分の暮らしに密接に繋がっている。



「時間の流れ方がまったく違う。のんびりもできるけど、規則正しくもなる。太陽さんと同じ時間で動いていく。焦りがなくなるんだよね。もう日が暮れるから、これをやっておこうっていう感じかな。寒くなってきたからストーブを点けようかとか。生きることを活かすっていうのかな」とBubb。

「都会にいると時間も数字で考えてしまう。あと何時間とか時計の針を追っかけてしまう。でもここでは数字よりもおてんとさんに合わせていく感じ」と8g。

自然の時間を受け入れながら、制作は進んで行く。当然のように生まれてくるものは違うはずだ。事前に頭で構築され、図面に落とされたものとは違うものが、3人から浮かび上がっていく。

「そもそも設計図がないもの作りが最高だと思っている。この景色を見ているし、ここでは変化が顕著だよね。過ごしていく時間のなかで、こうしたほうがいいとか見えてくると思います。それを感じながら作っていきたい。2回目の今回は外壁を変える。3人でイメージを共有しながら、いろんなところが変化していくのも、自分としては楽しみ。向こうから歩いてきて『あー!』って歓声をあげ、なかに入って『おー!』って驚く。そんな家にしたいね」とBubb。

BubbとGravityfree。3人にとって、トリエンナーレとしては2回目の夏がやってくる。けれど津南に通うようになって4回目の夏。四季を通してさまざまなことを学び、いろいろな人と出逢うことによって、「DEAI」が再生される。



大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015

「人間は自然に内包される」を基本理念にして、新潟県越後妻有地域で<大地の芸術祭>がスタートしたのが2000年。文化や暮らしを育んできた里山が、この芸術祭の舞台となる。
Bubb & Gravityfree with KEENとしてアートトリエンナーレには今年が2回目の参加。津南町の太田新田にある空き家をリノベーションした「DEAI」が更新され、出品される。
田んぼのなかに立つ、この地域の特長を有した家。 「DEAI(出逢い)」をコンセプトに、人と人、人と自然、伝統と革新など、さまざまな要素が出逢う場となる。
現代アートにふれながら、自然を感じ、長い時間をかけて成熟されてきた越後妻有の文化を共有する。越後妻有アートトリエンナーレ2015のテーマは「人間が自然・文明と関わる術こそが『美術』」。  <DEAI> においても、人間と自然が関わる術を受け取ることができる。

会 期:2015年7月26日(日)〜9月13日(日)
開催地:越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)760㎢
主 催:大地の芸術祭実行委員会
共 催:NPO法人 越後妻有里山協働機構
チケット:一般3,500円(前売3,000円)高・専・大学生3,000円(前売2,500円)中学生以下無料


KEENトレッキングセンターを開設

自然とアートを楽しむ〈大地の芸術祭〉の参加者に、フットウェアの無料レンタルを行います。広大なエリアをフィールドにする〈大地の芸術祭〉。歩くことによって違う角度でアートにふれ、越後妻有の自然を感じられるに違いありません。 <KEEN> のフットウェアを履いて〈大地の芸術祭〉を歩く。アートや自然との新しい「DEAI」が待っています。

会  期:2015年7月26日(日)〜9月13日(日)
開催時間:10時〜17時30分
場  所:大地の芸術祭2015 DEAI
レンタル料:無料
返却場所: <DEAI>、まつだい <農舞台>、
     越後妻有里山現代美術館キナーレの3カ所
特  典:レンタル時に、<KEEN>オンラインショップで使用できる
     30%OFFクーポンコードをお渡しします。


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