愛ある反逆のロックスピリットがもう一度世界を変える THEATRE BROOK 佐藤タイジ

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愛ある反逆のロックスピリットがもう一度世界を変える THEATRE BROOK 佐藤タイジ

太陽光のエネルギーを使いレコーディングが行なわれた。そのアルバムのタイトルは『LOVE CHANGES THE WORLD』。「愛は地球を変える」。今年の<中津川THE SOLAR BUDOKAN>のメインテーマでもある。音楽やフェスは、核心部に愛がなければならない。未来に繋がる愛のメッセージを佐藤タイジは発信し続ける。

文・菊地 崇

ソーラー電源でのアルバム制作。

––––  シアターブルックのアルバムが7月末にリリースされます。ソーラー電源を使ってレコーディングされたということですが。

佐藤 雨で、どうしようもなくグリーン電力証明書を使わざるを得ない日もあったけど、ほぼソーラーです。スタジオのあるビルの屋上にソーラーパネルを置かせてもらって。電源がストーンっと落ちちゃったこともありましたよ。

––––  それまでして、ソーラー電源にこだわりたい?

佐藤 我々がどこまでやれるのかっていうのが、今後の指針になってくると思うんです。CDの売り上げが落ちている音楽業界にとって、未来に繋がる新しいトピックなんですよ。ソーラーでやれるんだっていうことを実証して、後に残していくことが大事だなと思って。このままじゃ、原発の時代に戻ることになりかねない。戻らせないために、再生エネルギーのシェアを上げていかないと。

–––– <中津川 THE SOLAR BUDOKAN>にしろ、今回のアルバムにしろ、その想いに共感してミュージシャンが集ってきています。

佐藤 レコーディングにも多くのミュージシャンが参加してくれた。これって、2030年における電源構成の原子力の比率を20%以上にしようという政府案を、聞きませんよっていう意思表示なんですよ。再生エネルギーでやれるんですっていうメッセージをロック業界が打ち立てていることなんです。

––––  そもそもロックって反骨だったわけじゃないですか。

佐藤 それが産業になってしまった。反骨精神持ったヤツって、必ずいつの時代にもいるし、いつの時代でもはみ出してしまっている。でもそいつらが絶対に時代を作っているんですよ。

––––  底流に流れているアルバムのテーマが反骨のスピリットなんですよね。

佐藤 そしてもっと大きなテーマが「愛」です。〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN〉のコンセプトである『LOVE CHANGE THE WORLD』をアルバムのタイトルにしています。

––––  「愛は世界を変える」。

佐藤 そうあって欲しい。愛が世界を変えるような世の中であって欲しい。愛があって自由があって平和があるから、音楽がちゃんと機能しているわけで。今、この日本という国で音楽をやれているっていうことが、どんだけ素晴らしいことかっていう。東日本大震災の直後に音楽なんてやっている場合じゃないっていう風潮があったけど、俺はそう思っていなくて。〈LIVE FOR NIPPON〉というイベントをはじめ、それをUstreamで流したことで、海外からも反応があって。どんな状況でも音楽をやめちゃいけないんですよ。俺みたいにキャリアを持っちゃったミュージシャンは、発信し続けなければならない。立ち止まっちゃダメなんです。我々のやっていることは、未来にとって大事なことなんですから。

––––  震災以降、確かにタイジさんは走り続けています。

佐藤 震災以前にやっていることと、自分が今やっていること。別に大差はないんですね。自分は何も変わっていないと思っています。まだまだ転がり続けていく。どこまで転がっていくのか、自分でも楽しみだし、楽しみなことが増えてきているんですよ。仲間も増えているしね。俺よりも歳下のミュージシャンと一緒にやれる機会も増えています。すげえ才能を持っているヤツがいるし、すげえ考え方をするヤツがいるし、すげえフェアなヤツがいるし。このアルバムに参加してくれた全員がすげえヤツらですよ。

––––  一緒にやることによって、受け継がれていくこともありますよね。

佐藤 間違いなくありますね。今回のレコーディングにも参加してくれたCHABOさんやCharさんが切り開いてきたものが、TOSHI-LOWや細美(武士)、降谷(建志)などの後輩たちにも伝わっている。それって哲学的なことだと思うんです。自由であるとか、ちゃんと愛が真ん中にあるとか、それがあるからちゃんと繋がれる。そのことを自分でも再確認できたのが、新作アルバムなんです。ロックって形のないものだけど、我々は多大な影響を受けてきている。俺なりにそれを一番膨らませることができた。見えやすいロックになっていると思うんですね。自分のキャリアのなかでもシンボリックなアルバムになっていると思います。そうそう、来年はシアターブルックが結成30周年なんですよね。

––––  30年にわたって、ロックし続けている。

佐藤 そのキャリアがあるからこそ、このアルバムにしろ<中津川 THE SOLAR BUDOKAN>にしろ、みんなが集まれる場を作ることができた。日本のロックと再生エネルギーの希望があると思います。



希望がある場所での体験。 

––––  今年も9月に<中津川THE SOLAR BUDOKAN>が開催されます。

佐藤 中津川って、聞き方によってはダサく聞こえるかもしれないけど、希望があるんですよね。偶然にも中津川には核廃絶都市宣言のモニュメントがあって、武道館でやったときに協力してくれたソーラーの会社があって。古くは<フォークジャンボリー>が開催されていて。世代と世代を繋ぐタイムトンネルみたいになれているんですよね。気の流れがいい場所だと思います。だから具体的な希望が感じられる。ミュージシャンは、その匂いを嗅ぎ取って集まってきているのかもしれない。

––––  アンテナにキャッチしているんでしょうね。

佐藤 みんな感じているんだと思う。ミュージシャンが寄ってきたら、次は音楽好きが集まってくる。早く、政治家にも来て欲しいんですよね。

––––  政治家にも現場を見て、そして感じて欲しいと。

佐藤 政治家に賢くなって欲しいんですよね。3.11は賢くなれる機会だったんです。けれど、今はまったく逆の方向に向かっている。こんなわけがないって思っていますから。具体的にどうすれば流れが変えられるか…。

––––  我々ひとりひとりの行動も試されているんですよね。

佐藤 「見ざる聞かざる言わざる」の国民だとすれば、未来はないじゃないですか。そんなはずはないって信じていますけどね。

––––  ただ選挙などの結果を見ていると、「見ざる聞かざる言わざる」の人が多いように思います。

佐藤 何がそうさせているのか。わからないですよね。アメリカなのか経済界なのか…。俺たちが指向しているものとは逆の方向に向かわせているのは、ごく一部の人なんだけど、その人たちを繋いでいるのは、明らかに愛ではないですから。

––––  愛とは逆のものかもしれませんね。

佐藤 虚無かもしれないですよね。何もないはずなのに、その何もないことに囚われてしまっている。

––––  未来を見ないようにしている。

佐藤 例えば集団的自衛権の問題にしても、自分たちのやろうとしていることで、どれだけの命が失われてしまうのか想像していないんですよ。結局、戦争する人って想像力がない人たちだと思うんです。

––––  確かにそうだと思います。

佐藤 幸せって何なのか。安倍(晋三)さんにしたって、果たして今が幸せなのかどうか。オバマさんが幸せなのかどうか。もしかしたら国家というものが、どんどん無意味になっていくかもしれない。

––––  その意味でも、みんなが共有して未来を描ける場作りが大切になってくると思います。その場が<中津川 THE SOLAR BUDOKAN>なんだろうし。

佐藤 自分たちのエネルギーを確保すること。自分たちの安全を確保すること。自分たちの幸せを確保すること。<中津川 THE SOLAR BUDOKAN>はそれに向かって前進している。だから希望があるんです。

 
3年目の進化。

––––  3年目の今年、どう進化していくのでしょうか。

佐藤 ワークショップを充実させようと思っていて。教育っていうことが大事やと。中津川は、本当に自由であることが可能な場所だから。いろんな技術や考え方を残していかないと。この国の辞書から「自由」っていう文字が無くなりかけているから。

––––  確かに、自由そうでいて、自由ではいられなくなっているのかもしれない。

佐藤 ファッションとか髪型でも、そう思うもん。90年代からずっとこの髪型を続けているけど、この髪型は90年代よりも今のほうが異常に見られてしまう。自由っていうことが、どんどん制限されてきているなあって思う。独裁的な権力って、情報と教育と愛情を制限する。歴史を振り返るとほとんどそう。今の日本もそうなってきている。自由はスマホのなかにはないよ。

––––  自由を体感できる場所、自由を考える場所が<中津川 THE SOLAR BUDOKAN>であると。

佐藤 全部がスマホのなかに転がっている。〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN〉に行ったことはないけれど知っているよ。そう考えている人はたくさんいると思うんだよね。でも体験したかしないかは、絶対的に違う。体験することって、本当に大事ですよ。例えば2000年のPHISHの日比谷野音。自分の見たものがどれだけすごいかっていうことを一生懸命言葉にするんだけど、なかなか伝わらない。見る前までは知っているつもりだったけど、見た後のPHISHは別物になったもんね。

––––  ひとつの体験が人生観を変えることもあるわけですし。

佐藤 PHISHは野音で最後に「FREE」っていう曲をやったんだけど、自由ってこういうことなんだなってすげえ思った。

––––  子どもたちの世代に伝えていくこと。同時に世界にも発信していくこと。フェスやアルバムを通して、それを続けていくことが大切だと思います。

佐藤 3月11日に巨大な地震が起きた。原発がぶっ壊れるくらいの事故って世界にも類がないわけじゃないですか。それに蓋をして戦争に向かう政府とは、まったく逆に向かっているわけでしょ。それを知って欲しい。こういう日本人も少なくないんだっていうことを知って欲しい。

––––  転がり続けていくタイジさんを期待しています。

佐藤 ロックし続けますよ。




PROFILE
1986年に結成したTHEATRE BROOK。95年にメジャーデビュー。95年に中條卓(Ba)、96年にエマーソン北村(Key)、97年に沼澤尚(Dr)が参加した。2007年2年間の活動休止後の復活第一弾シングル「裏切りの夕焼け」をリリース。東日本大震災後には武道館ライブをソーラー電気だけで行う企画〈THE SOLAR BUDOKAN〉を成功させ、2013年からは野外フェスをすべてソーラーの電気だけで開催する〈中津川THE SOLAR BUDOKAN〉を主宰している。

FEST INFO
7月31日〜8月2日ひかり祭り @牧郷ラボ
8月14日〜15日RISING SUN ROCK FES @石狩湾新港ふ頭横野外特設ステージ
9月26日〜27日中津川THE SOLAR BUDOKAN @中津川公園特設ステージ

CD
『LOVE CHANGES THE WORLD』
7月29日にリリースされるメジャーデビュー20周年を記念するアルバム。タイトルは、今年の〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN〉のメインテーマでもある。レコーディングに関わる電力は、ほとんど太陽光発電によるエネルギーを使用。仲井戸“CHABO”麗市、Char、斉藤和義、TOSHI-LOW、細美武士、Kj(Dragon Ash)…。〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN〉を通じて交友を深めたミュージシャンたちが多数参加している。


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