祈りとともに 地球の上に生きる

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祈りとともに 地球の上に生きる

和歌山県和歌浦の海岸線にある蓬莱岩と呼ばれる場所で、アリシア・ベイ=ローレル、Little Eagleのカオリコさん、根本きこさんの3名から、『祈り』にまつわるメッセージを受け取った。

文・渡辺 亮/写真・和田雄輝





Alicia Bay Laurel アリシア・ベイ=ローレル


1970年代に『地球の上に生きる』という本を世に出したアリシア・ベイ=ローレル。「地球とひとつになるための暮らし方」について、さまざまな事例を呈示してくれた。独自の視点と感覚でさまざまな活動を続けてきた、アリシアにとっての「祈り」とは?

『祈り』とは聖なるスピリットに耳を傾け、対話すること。その対話を通して、それぞれの思考や行動が生まれてきます。

私にはいくつかの『祈り』の手法があります。純白な光の円が私を包み、安らぎ、忍耐、知性、直感、愛、強さやユーモアなどを与えてくれるようイメージします。次に、その光の円をミラーボールが包み込み、私にとって最善のものだけが鏡を通って滋養となり、不要なものは鏡で跳ね返されるようイメージします。また、私の中心から、地球の中心に向かって根を伸ばしていくようイメージすることで、私を地球の緑のエネルギーで養ってくれるようイメージします。『祈り』は、自然と共存する持続可能な社会を創るために、私たち個人を強くする有効な手段なのです。

日本人は、日本文化のなかにある倫理的な感覚を大切にし続けなくてはいけません。アメリカからみると、人々が盗みをしないという国があるということは、信じ難いことです。日本は、ある意味、理想郷です。この倫理観は、お米を育てるために必要な協力体制に由来すると思います。ある村全員を一年中養うための必要なお米を収穫するには、村人全員が協力しなくてはなりません。その結果、村人たちはお互いを大切にし、村全体に大きな義務感を持つようになります。ただ、この日本人特有の全体に対する義務感の悪い側面は、権力に対して疑問を抱いたり、立ち向かうことを避けたがる点にあります。福島の原発事故が起こった今、日本人は政府が企業の利益を守る為に国民に嘘をついてきたことに気付きました。何千人もの人たちが、街で抗議デモをしています。私は、すべての原子力発電所が永久に閉鎖され、核廃棄物の消却が終わる日まで、日本の皆さんが声をあげ続けることを願っています。これは、長く時間のかかる仕事です。やるべきことは、沢山あります。だからこそ、私たちには、『祈り』の力が必要なのです。



Kaoriko カオリコ

自然のなかのスピリットを感じ、衣に吹き込む、Little Eagle デザイナーのカオリコさん。自分の存在は自然の一部であるということを日々の暮らしのなかで感じているという。

アリシアが、以前、私の母の姿をみて驚いていたのですが、私の母は台所にある火や水を使う前に、ひとつひとつ手を合わせるんです。言葉にはなく、自然と手を合わせる行為。五感から伝わる行為。朝、夕、深々と祈る母の姿は、きっと永年に私のなかに生き続ける気がします。『祈り』は日々の感謝からはじまるのです。

一度、私も『祈り』とはどういうことだろうと考えたことがあります。とても言葉では表現できない深い想い。あるとき、それは、自然に心にあふれる至福のような感謝の気持ちなのではないだろうか、と感じたことがありました。あたりまえに存在している自然や家族こそ、本当はあたりまえにはないということを、私たちは失ってみて初めて気づきます。

大きな『祈り』のまえに、まずは自分の足元にある存在に祈り、そして多くを望まず、今ある全てに感謝を忘れないでいることを大切にしたいなと、心から思います。小さくても確かな『祈り』が、無限の『祈り』に、そして未来への『祈り』へと繋がっていくと信じています。



Kico Nemoto 根本 きこ

フードコーディネーターとして活躍してきた根本きこさん。同時に心地よい暮らしの在り方について、さまざまな分野で発信してきた。震災以降は沖縄県の原生林が残るやんばるの森のなかへと移り住んだ。

うちでは生活用水は川の水を使っているのですが、飲み水は近くの滝にもらいに行きます。そのとき、子どもたちと一緒に『お水、いただきます』って手を合わせています。また、うちの家の前には、立派なクスノキが2本生えているのですが、子どもたちが外に出かけるとき、または帰ってくるとき、そのクスノキに挨拶をするんです。特に親が言ったわけでもないのに、自然と言い始めてました。だから私たち家族にとっては、『祈り』ってそういうことなんです。まわりにある身近な自然に感謝するという気持ちなんですよ。

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