omni sightインタビュー エレクトリックで表現された深淵な京都の音

カルチャー&トレンド

omni sightインタビュー エレクトリックで表現された深淵な京都の音

L.E.D.のリーダーである佐藤元彦が、京都に移住して、京都という街に流れる空気感や京都で生まれているものを、自分の音で表現することをはじめた。そして誕生したのがomni sightというユニットだ。深淵な京都の音が聞こえてくる。

 

––– まずomni sightのことを教えてください。いつ、どんなきっかけ結成したのですか。

震災をきっかけに東京から京都に引っ越してきたんですが、京都のいろんなシーンの音に触れるにつれて、その土地ならではのスタイル、個性が出会ったどの音にも刻まれていることに大きな刺激を受けました。その過程で自分が暮らす街として京都と向き合いながら、そこで感じたことがちゃんと鳴っている音をつくりたいなと思うようになっていきました。

そんなときに京都シーン最重要バンドにして大先輩のsoftの清水さんが、京都ではまだなにも始めてなかった自分に声をかけてくれイベントに誘ってもらったことがスイッチとなって、omni sightの原型となる音を作り始め、新しく何かをスタートさせたいというモチベーションも持つきっかけになりましたね。

––– もうひとりのメンバー、平井直樹さんとはどのように出会ったのですか。

平井さんとはomni sightの結成に際して出会ったわけではなく、もともと東京で活動していたロックバンド、Jackson vibeで一緒にリズム隊として活動していました。それが、彼もほんとに偶然に自分と同じ時期に同じ様に京都に家族で越してきて。これはもうなにかの縁というか一緒になんかやんないとだなと思いました。長年同じ釜の飯を食ってきた同志として、お互いに信頼はすでにありますからね。ドラムを呼ぶなら平井さんと決めていました。


––– 9月にアルバムがリリースされました。どうやって制作は進められていったのですか。

 最初はまだ平井さんも呼んでなくて、リリースをどうしようとか全く考えていませんでした。ただただ京都での日々の生活の中から、みたり感じたりしたことやモノ、景色、出会う人から得られたものを(ときには実際にそれらを素材としてフィールドレコーディングしながら)、自分なりに音に変換したいという初期衝動に従って、自宅作業を好きなときに好きな様にやっていました。

そうしているうちにアルバムとしての道筋がだんだん見えて来て、ドラムが必要になり、平井さんに参加してもらってスタジオ入って…という流れからは早かったですね。

必要になった音やイメージをその人の音として咀嚼して鳴らしてくれそうな京都の友人アーティストたちに重ねてもらっては、編集という作業を繰り返して完成までのブラッシュアップへと進んでいけました。なので、良くいえばじっくり醸成させるような作り方ができたともいえるんですが、のんびり自由にやっていたので丸々2年かかっちゃいましたね。

––– アルバムを作るにあたって、どういう音にするのかというコンセプトは明確に抱いていたのでしょうか。

京都に暮らすなかでしか感じ得ない感覚や経験というものを自分のフィルターを通して捉えたいというコンセプトというか初期衝動ですね。そこは明確でした。

より具体的にいうと、ダンスミュージックとしての肉体性も機能させつつ、熱くなり過ぎないちょうどいい塩梅、平熱感覚でサスペンドする気持ち良さみたいなもの。鴨川を散歩したり京都の街に流れるゆったりとした時間感覚、雰囲気ですね。でも決して日常そのものではなく、そこはやっぱり非日常性を帯びているというようなバランスで。神社仏閣のような凛とした空間、ある種の非日常的な場が、当たり前に生活の中に入り込んいでる感じだとか。そういった感覚は京都のバンドの音やアーティストの作品に触れたりしてるとすぐ感じられます。

僕の場合はそれが先述のsoftやそのシーンのDJたち、今はレーベルメイトとなって、アルバムにも参加してもらった原摩利彦君やPolar M君などnight cruisingの面々やその周辺のアーティストだったりします。

 

––– ふたりの音楽のバックボーンの違いが、このアルバムには現れているのですか。

まず平井さんと僕のリズム隊としてのバックボーンはsoulやfunkといったダンスミュージックの中でも、ブラックなテイストで共通するとこが大きいですね。omni sightでは一聴しただけではあまりそこを感じないかもですが、自分たち的にはそこを核として機能させているつもりです。バックボーンはむしろ同じなんですが、コンセプトとしてのサスペンド感、平熱感覚を僕が意識的に担って、そこに共通するバックボーンとしてあるファンクネスを必要な熱量、温度感で注入するのが平井さんといった役割分担ですかね。噛み締めて聴いてもらうとスルメ的にダンスミュージック、ブラック要素も感じてもらえるかと。

––– ふたりで作ることのメリット、デメリットを教えていただけませんか。

 メリットはomni sightはバンドでもなく、トラックメイカーでもないので、ふたりでその間をまさにサスペンドしているんですが…。その両方のフォーマットでの平井さんのドラマーとしての経験値が高いので、そこは思いっきり委ねられることでしょうか。肉体性をときに熱く、ときにはクールに落とし込む作業を見ているといつも唸らされます。自分はトラックメイクに重きをおきつつ全体のバランスに気を配る役目ですね。ふたりの分業と役目がはっきりしているので、やってくほどにもっと強化されてくと思います。

一方、デメリットはほんとにないですね。強いていうなら平井さんの父親業が忙しくて、スタジオやライブスケジュールを調整するのが大変そうだな…と思うくらいです。


––– ライブにも非常に興味があります。アルバムとは違った世界観になるのでしょうか。

 そうですね。アルバムは情景とか景色といった映像をイメージさせるようなもの、そこに自然と付随してくる繊細さ、緻密さといった録音作品物としての表現を大事にしているので、定位や素材のトリートメントから始まって、ミックス作業の過程そのものも作品のストーリーであり表現そのものとして扱っています。そこを感じとって家でゆっくりリスニングしてもらいたいと思う一方で、ライブでは、あくまでフロアで聴くもの、体で感じるものという意識に変化します。熱量やテンション感はアルバムとは分けて考えていますね。やっぱりフロアに来たお客さんには腕組みして聴いて欲しくはないですからね。 

まずは自分たちの音を浴びて単純にリズムにノッて楽しんでもらいたいという、先ほど核にしていると言ったブラックテイストな肉体性の感覚が勝ってきます。身体で聴いてもらっているうちに、次第に頭で脳で感じとれる定位変化、音の粒子だったり素材の音質変化などにも感覚をシフトしてもらって、最終的に頭と体の両サイドで楽しんでもらえたらいいなと思っています。

––– 単純な質問で答えにくいと思いますが、アルバムとはどういう存在ですか。また今後、盤はどうなっていくと思いますか。

 アーティストのそのときのすべてを込め記録するフォームとしてアルバムほど最適なものはないと僕は思っています。アルバム1枚完成させるまでにほんとにたくさんのドラマが生まれます。

この『eternal return』も作り上げるのにたくさんの人との出会いと交流があってそれぞれのセクションで最高のものを繋げて紡いでやっとできたものでした。つまり、アルバムを作り上げる過程自体がそのアーティストにとっても財産になるのです。結果そのアーティストのそのときのすべてが込められることになり、時代に淘汰されない本物の音に満ちた素晴らしい作品を生みやすいんじゃないかと思います。

昨今アルバムというアートフォームの意味合いが薄れ、音楽が1曲単位でもの凄いスピードで消費され、薄まっていく中でにわかのシーンやトレンド、手軽さだけに偏重しがちなのは、とても残念なことだと思います。一方でアンダーグラウンドでは若い世代のアナログブームや新たなシーンも生まれて来ています。それらを一過性のものと為さないように、各世代にとっての先人たちの遺してくれた音へのアティテュードを繋いで心あるアーティスト、メディア、リスナーが踏ん張って欲しいと思うし、願わくば、「いいもの」こそが残る世界になればなと。自分たちも微力ながらもそこに加われたら最高ですね。

 

––– 最後に、今後の活動を教えてください。

次は、このアルバムリリースの流れで「いいもの」としてしっかり機能するアナログ盤を来年には出したいと思っています。あとはやはりライブをやっていきたいですね。今年もリリースツアーなど数本ありますが、来年もツアーとして行けてないとこに引き続き演奏しにいきたいですし、野外フェスや海外にもどんどんでていきたいですね。それと、ライブでも基本はふたりなんですが、今回アルバム参加してくれたNabowaの啓君やPolar M君、L.E.D.の加藤君などと3ピースでのライブはやったことがあって、これがバンドとはまた違う空気になって塩梅がいいんですね。

それぞれの持ち味とスタイルでomni sightの景色がいろんな色に変わって、迎え入れる自分たち的にも徹子の部屋みたいな感覚になれて楽しいんですよ。そのときの流れや出会いで気の合うミュージシャンややってみたい人とも積極的にジョイントしたり、DUOの機動性を生かしてフレキシブルに観せていけたらなとも思っています。

 

omni sight

L.E.D.のリーダーでベーシストの佐藤元彦、BOOM BOOM SATELLITESやORIGINAL LOVEなど様々なアーティストやバンドのドラマーとして活躍してきた平井直樹により京都で結成されたユニットomni sight (オムニサイト)。2015年9月、ファーストアルバム『eternal return』をリリース。

 

関連記事

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑