正義はどこへ!?裁判で見えてきた公職選挙法のあり方

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正義はどこへ!?裁判で見えてきた公職選挙法のあり方

「市民派選挙の神様」と呼ばれ、40年以上にわたり政治にかかわる活動を続けてきた斎藤まさしさんが、現在、公職選挙法違反の容疑で起訴されている。その裁判の行方は、私たちの未来をも左右するもの。今、公職選挙法のあり方を、今一度見つめ直す時がきている。

テキスト・甲藤麻美


市民派選挙の神様、逮捕!


これまで40年以上、1,000回を超える選挙戦にかかわり、「市民派選挙の神様」と呼ばれながら政治にかかわる活動を続けてきた斎藤まさしさん。参議院議員の山本太郎さんの選挙運動もサポートしてきた人物だ。

そんな斎藤さんが、2015年4月に行われた静岡市長選挙での活動が公職選挙法違反であるとされ、5月に逮捕、6月に起訴された。候補者高田とも子さんの兄らと「共謀」し、告示前の3月13日に、出馬表明していた高田とも子さんのチラシを「高田とも子です。よろしくお願いします」と声をかけながら街頭配布したことが「事前運動」にあたるなどと、検察は主張している。

2016年3月31日、静岡地方裁判所でこの裁判の結審が行われた。女優の木内みどりさん、ミュージシャンの三宅洋平さん、弁護士で元農林水産大臣の山田正彦さんらをはじめ、多くの人がつめかけ、36席ある傍聴席は満席。立ち見が許されていないため、廊下やロビーにまで人が溢れ、代わる代わる席を譲り合いながら結審を見守った。



不当逮捕!?明るみになった検察側の手法。


結審は検察側の論告・求刑から始まり、一気に長い論告が読み上げられる。その主な内容は「よろしくお願いします」と言ったということに終始していた。

一変、弁護団3名による最終弁論に移ると、検察側による信じ難い手法が次々と明らかになっていく。驚くべきことに、事件のなかで重要な証拠として警察が押収した選挙対策会議の議事録のうち、検察から「共謀」があったとされている3月9日と、警告を受けてチラシ街頭配布中止を決定した3月14日のものが消えてしまっているという。その他の日の議事録は欠かさず存在するというのに、よりによってこの重要な2日間の議事録がない、というのである。起訴をするにあたり、都合の悪いことが書かれていたと思わざるを得ない。

さらに、3月10日の議事録のコピーにニセの書き込みをして証人に供述を迫っていたことなど、数々の虚偽公文書作成の事実が明るみになった。加えておかしなことに、対抗馬であった現職の田辺市長が同じく公示前に配った違法性の高いチラシについては、事前運動の捜査対象に一切なっていないという。

弁護側は、「本件捜査は、何がなんでも斎藤氏を起訴するため、捜査機関が組織的に違法な捜査を繰り返し、また、著しく差別的な捜査によって起訴したものである」として、公訴棄却を訴えた。

戦前の体質から抜けない曖昧な公職選挙法。


そもそも現在の公職選挙法は曖昧なものだ。そうした理由から、候補者側でも、また捜査当局側でも、警告を受けてすぐに従えば、「お咎めなし」というのが慣例とされてきた。「選挙違反にはいつも気をつけていた」という斎藤さん。これまで携わった1,000回以上の選挙において、何の問題もなくきているのだ。ところが今回初めて、チラシの街頭配布が違法性の恐れがあるという警告に、すぐ中止を決めたのにもかかわらず、当初何も触れていなかった「高田とも子です。よろしくお願いします」という呼びかけの言葉を理由にして強制捜査に踏み切ったという。

被告人最終意見陳述で、斎藤さんは今回の事件が警察・検察による違法で不当な政治介入、選挙干渉事件であるとして涙ながらに声を張り上げ、最後はこう訴えた。

「大物政治家による告示前の選挙応援が常態化して久しい現状にあって、今こそ裁判所も勇気を奮って、民主主義を守り発展させるために、より明確な判例を出さなければならない時なのではないでしょうか!」

このとき、傍聴席、そして傍聴席に入りきれずに、壁に耳を押し当てて聞いていた法廷の外からも大きな拍手が沸き起こった。

公職選挙法のあり方が、今問われている。



結審後、弁護士会館で行われた集会で、今回の弁護団はこのように語った。

「今回のチラシ配布に対する制限は、憲法21条で保障されている表現の自由を制限するもの、政治活動を制限するものであることは皆さんよくおわかりになっていると思います。今まで何の問題にならなかったチラシ配布行為、あるいは呼びかけの言葉、そういうものを今回特段にとりあげて無理矢理これが投票依頼を含むものだということで、警察がなんとか斎藤さんの政治生命を抹殺しようとしてきた暴挙であるということは間違いない事だと思います。そういう意味で、公訴棄却とともに、最終的にこれは憲法に違反する起訴なんだというのが我々として言いたかったところです」

「日本の選挙制度そのものがちょっと時代遅れ。アメリカの大統領選挙見て皆さんどう思いますか? これ、大統領選挙は10月とか11月とかずっと先ですよ。それなのに大変な盛り上がりを見せている。あれは日本でいえば事前運動ですよね。だけど、日本ではたった1週間とか2週間とか短い期間で我々の代表を選んでいかなくちゃいけない。ここに日本の民主主義は危機を迎えていると、そこに原因のひとつがあるんだろうと思っているんです。もうひとつは、公職選挙法というのは、古すぎて曖昧だということ。結局捜査当局のさじ加減ひとつで犯罪をつくりあげることができる。やっぱり公職選挙法は、国民のための代表を選べるようなものでなくてはならない。すぐに法律は無理でしょうから、この裁判で、国民のための公職選挙法というかたちになるように、裁判官の人達にも考えて欲しいと思います」

新人が選挙で勝てなくなるという危機をもたらす。


そして最後に、斎藤さん本人の口からこう語られた。

「今日から判決が出るまで、多くの方に、真実を知ってもらいたいと思っています。警察や検察による政治介入、干渉はずっとやられてきました。もし今回有罪となってしまったら、チラシの配布ができなくなるのはもちろん、警察が逮捕したい人をいつでも挙げることができるという判例を、この、参議院選挙、ひょっとしたらダブルかもしれない選挙の1ヶ月前につくられてしまうということになります。だからどうしても勝ちたい。僕が選挙をやりたいということもあるけれど、これが有罪なら、新人候補はほぼ選挙に出ても難しいということになってしまうと思います。特に組織のない人が選挙に出て当選するということは、ほぼ難しくなってしまう。チラシが撒けないのですから。ぜひその辺りを伝えていただきたいと思っています」

これは、斎藤まさしさんの裁判であって、それだけではない。公職選挙法、そして民主主義のあり方を問う、国民全員の未来にかかわる重要な裁判だ。判決が出るのは6月3日13時10分。多くの人の公正な目で、この裁判の行方を見守らなくてはならない。



裁判の詳細は「選挙干渉裁判チェックの会」HPへ。

http://no-unjust-interference.jimdo.com

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