縄文スピリットを探して 第4回 九州の縄文人は災害をどう乗り越えた?

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縄文スピリットを探して 第4回 九州の縄文人は災害をどう乗り越えた?

文=草刈朋子/写真=廣川慶明


4月14日の21時前のこと。東京の自宅のリビングでテレビを見ていたら、かすかにミシミシッと音がして部屋が少し揺れた。地震だ。遠くで地鳴りのような音もする。21時のニュースが始まった。トップは元航空幕僚長の田母神俊雄の逮捕の話題。何事もなかったようにニュースは進み、しばらくしてテロップに震源は23区、最大震度2と出た。ニュースの扱いも小さかった。 

たいした地震ではなさそうだ。でも自分の住んでいる直下で起こったことだけに気になってインターネットで地震の情報を集めていたら、今度はiPhoneの緊急地震速報が鳴った。はっとして画面を見ると、熊本県熊本地方でM6.5とある。相方のヨッシーと顔を見合わせた。私たちはひと月前に九州を訪れたばかりだったのだ。3月の中旬に桜島、霧島、阿蘇という日本有数の活火山地帯を車でめぐりながら、火山灰が分厚く堆積したシラス台地を何度も見た。あのとき地下ではプレートがせめぎ合い、地震へと至るエネルギーを溜め込んでいたのだ。


阿蘇山の西側にある熊本市は、火砕流の堆積物の上に多孔質の石や火山灰が何層にも積み重なった複雑な地盤を持つ。複雑であるがゆえに一度地震が起これば断層同士が連動しあい、広範囲に被害が及んでしまう。幸いにも旅で知り合った人びとは全員無事だが、余震が続くなかで避難所や別の場所に身を寄せた友人も多く、今も気持ちが休まらない日々を送っている。一刻も早くゆれが治まるよう祈らずにはいられない。

自然の力の前で人間は無力だ。でも本当にそうだろうか? 鹿児島では桜島の火山灰に埋まってしまった9500年前の縄文集落の痕跡を見た。そこに暮らしていた人々は素朴でありながらセンスのある土器を作っていた。その後、彼らがどこに行ったのかはわからない。しかし、それから2000年後の地層ではイヤリングなどのアクセサリー類や丁寧に埋納された土器や石斧、そして無数の土器の破片が見つかっている。それらは、後世の人々がここでまつりの儀式を行っていたことを意味する。荒ぶる自然に抱かれて、南九州の縄文人は精神的な世界を深めていたのだ。

所蔵:鹿児島県立埋蔵文化財センター

竪穴住居に住まい、自然から食料や道具の材料を調達する。オールD.I.Y暮らしの縄文人にとって、自然は基本的に恵みをくれる存在だ。しかし、ふだんおだやかな人が怒ると怖いように、自然はときとして豹変する。そのような荒ぶる自然に直面したとき、大いなる力の存在を感じてしまうのが人間というものではないだろうか。

日本列島は地震や火山の活動が活発で、島であるがゆえに雨や雪が多く、台風もよく通る。この変化の激しい風土において人びとが万物にカミや精霊が宿るというアニミズムの世界観を見出し、儀式を通してカミガミと交流をするまつりを育んだのは想像に難くない。 

自然に祈り、そして踊ること。まつりで得られる情熱や一体感は、厳しい自然のなかでサバイブするための大きな力となっただろう。たとえ災害に打ちのめされたとしても、この島の人々が自然を敵対視せず、共生の方向に向かったのは、自然を擬人化し、まつりを通じて常に自然のカミガミとコミュニケーションをとってきたからだと思う。そうやって気持ちの折り合いをつけて自然界の中に人間の立ち位置を見つけてきたからこそ、縄文時代は1万年間という悠久の時間を紡いだのだとも思う。

今、被災地では長引く余震に対して、行き場のない思いを多くの人が抱えている。そんなときに本質的に人の心を癒し、明日を生きて行くための力をくれるのは、人と自然、人と人をつなげるまつりなのかもしれない。それは必ずしも伝統的なまつりでなくてもいいと思う。手作りでも構わないから、自然を思い、飲んだり踊ったり、話ができるようなちいさなまつりが増えたら、救われる心もあるのではないだろうか? こんなときにまつりなんて不謹慎と思われるかもしれないが、それが九州の縄文人が教えてくれたことなのだ。



INFOMATION

5月27日(金)にNPO法人Jomonismの総会をやります!「総会」といっても堅苦しいものではありません。「縄文」というルーツを感じて今後面白いコトをやっていくためのいわば決起集会です。当日は、2015年に縄文業界?に新星のように登場した話題のフリーペーパー「縄文ZINE」の編集長の望月さんと、どぐキャラ総選挙などを展開するウェブメディア「どぐぽた」の小林千幌さん、Jomonism代表を交えたトークセッションも開催。縄文好き、集まれ!

Jomonism SOKAI―総会―2016
場所:dining cafe theater(ダイニングカフェシアター)
東京都渋谷区渋谷2-2-6 B1F
http://r.gnavi.co.jp/a680500/map/
日程:5月27日(金)
時間:18時30分開場19時スタート
金額:¥1,500(1ドリンク付き)

[縄文トークセッション・ゲスト]

テーマ:今だからこそ注目したい縄文の価値観!

望月昭秀(「縄文ZINE」編集長)
小林千幌(「どぐぽた」編集長)
小林武人(NPO法人Jomonism代表)

進行:草刈朋子(縄文ライター)

jomonism.org@gmail.com 



profile 草刈朋子:縄文ライター

北海道出身。東京造形大学在学中よりインディーズ雑誌を発行。映画のコピーライター、育児雑誌の編集、書籍編集を経て独立。2009年よりNPO法人Jomonismに参加し、縄文関連イベントや縄文アート展の企画・運営に携わる。2014年より縄文ライターとしての活動を開始。縄文カルチャーから現代を見つめるべく、カメラマンのヨッシーを伴い東へ西へ。フェスなどで黒曜石で作るアクセサリー作りのワークショップも行なっている。

profile 廣川慶明:フォトグラファー 

三鷹出身。写真は独学で学ぶ。野外音楽フェスティバル「ワンネスキャンプ〜縄文と再生」でカメラマンを務めたことをきっかけに、縄文に興味を持ち、各地の縄文スポットを訪れては撮影し続けている。縄文×現代カルチャーの接点を日々想像。時に空想。


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