こだま和文最終新世界ライブ
3/30(水)Original SHINSEKAI Final Special 4days 第三夜「KODAMA AND THE DUB STATION BAND/終着駅は無く、、、」
出演/KODAMA AND THE DUB STATION BAND:
こだま和文[Tp,Vo]、AKIHIRO[Gt]、コウチ[Ba]、森俊也[Dr]、HAKASE-SUN[Key]、内田直之[Dub Mix]
御予約、詳細→http://shinsekai9.jp/2016/03/30/kodama-and-the-dub-station-band/
取材、テキスト=エンドウソウメイ / 写真=片岡一史
実に8年5ヶ月ぶりとなる現状のキャリア最後のパーマネントバンド「KODAMA AND THE DUB STATION BAND」が再始動!
そして、はかったかのように約束の地「新世界」のファイナルステージを飾ることがここに決定!
バンドの凍結理由等、現在の閉塞社会を俯瞰しそれを絡めダブマエストロはダブポエットのように深層を語る。
こだま和文バンド回帰、それは彼の終章の幕開けなのか、それともアセンションへのトリガーなのか?
エンドウソウメイ(以下エンドウ): まず、KODAMA AND THE DUB STATION BANDの昨年クリスマス再始動前の最終公演はいつになるのでしょうか?やはりフェスですかね?フジロック(2005年)とか?
こだま和文(以下こだま):あとライジングサン(2006年)とかね。7年ぶり?(実際には8年5ヶ月ぶり)
エンドウ:そんなに経ちましたか?
こだま:最後のアルバムが『MORE』か。でもね、そういう時間軸みたいなもの。例によって、ハハハハハ(笑)エンドウくんはよくお分かりだと思いますが(笑)全然駄目なんだよ。
エンドウ:大丈夫です、調べときますね(笑)
こだま:だから最後は、
エンドウ:こだまさんの記憶だとライジング?
こだま:そんな感じがするな〜。それかフジロックのRED MARQUEE。フジロック全体もその日が最終日で、
エンドウ:本当の最終アクトですね。
こだま:そう、そこでやったの。
エンドウ:それは今でも語り継がれるくらいに良いパフォーマンスと評判でしたね。
こだま:自分たちのライブが終わって外に出たら、いわゆる祭りの後で、ギャズ・メイオールかなんかが酔っ払って4〜5人でたむろしているようなイメージが残っているなあ。※ 実際には2007年7月7日の西麻布「YELLOW」が昨年末前の最終ライブ。
こだま:スタジオ録音のアルバム『MORE』が2006年とか7年とかその辺でしょ。
エンドウ:2005年にリハ音源をマスタリングしたアルバムが出ますよね。
こだま:『IN THE STUDIO』だね。その後、2006年に新録して一連のフェスとかに出るようになったんだよな。そう思うと最後は2007年とかかな?
エンドウ:バンド結成の切っ掛けはフリーペーパー「RIDDIM」の200号記念のリキッドルームでのイベントで正しいのでしょうか?
こだま:99年かなんかでしょ?
エンドウ:はい、99年。
こだま:そうでしょ?それは覚えてるんだよ。ベースのコウチがよくその話をするから。
エンドウ:当時の名義はこだま和文 & His Friends。
こだま:それはバンドだけじゃなくてそのイベントそれごとその名義だったの。OverheatがRIDDIMの200号記念で、「その一日のステージを全てお前がやれ」となって、それでボクがバンドを結成したんですよ。つまり、DJ KRUSHとか、畠山美由紀のデュオ、
エンドウ:ポート・オブ・ノーツ?
こだま:うん、ポート・オブ・ノーツとか、その時にボクがかかわっていた人達、
エンドウ:バンドは一晩のハウスバンドとして?
こだま:違う。全然一個ずつ別なんだ。
エンドウ:ではオーガナイズも含め?
こだま:そうだよ。それで僕が3時間以上出ずっぱるという。
エンドウ:成る程。ポート・オブ・ノーツにこだまさんが乗っかる、
こだま:そう。KRUSHとやる。DJ YABBYとのDUB STATIONもやる。且つ、バンドもそこでお披露目という形だったの。どのアクトにもボクがいるという。だから3時間ずっと出ている訳だ。
エンドウ:なにより、凄い体力でしたね。
こだま:凄いよ、その時は(笑)そうだ、それでロイド・バーンズもニューヨークから呼んだんだから。丁度ボク、ソイツァーミュージックに入ってビクター/スペードスターの第一弾として「Requiem Dub」をリリースした時期で、ダブポエットをやってくれた、まあエンジニアでもあるんだけど、ワッキーズのロイド・バーンズにも声を掛けたんだよ。そしたら来てくれて。ボクにとってもRIDDIMにとっても凄い豪華な一日だったんだよ。
エンドウ:大役でしたね。
こだま:うん、大役。そういう体力あったんだね(苦笑)それとオレ、バンドもミュートビート以来のバンドな訳だよ。バンド活動から10年近くたって自分はソロ活動を始めて、正直バンド活動にはトラウマがあって……、
エンドウ:名を成したバンドだけにいろいろあったと思います。
こだま:うん、それ以来の自分のバンドだから、がんばったんだよ。
エンドウ:はい(神妙に)。この時のバンドは骨格になっているのは「やっほー!バンド」じゃないですか?
こだま:うん、そうだね。
エンドウ:ってことは、既に親しくお付き合いがあったと?
こだま:いや、ほとんどない(きっぱり)
エンドウ:えっ??そうなんですか?
トラウマともなっていたバンド活動に10年ぶりに踏みきったこだま和文。しかしその母体となる「やっほー!バンド」はその時点でまったく面識がなかったという。そんな距離がいかにして埋まっていったのか?そこには今回の再始動にも大きく尽力したベーシスト、コウチの存在があった。
こだま:ボクがDJをやるイベントがあって、
エンドウ:それ新宿の「オープン」じゃないですか?
こだま:そうだね。そこにベースのコウチが来てくれて、デモをくれるんだよな。それが始まり。
エンドウ:それがやっほー!バンドの音源だったと。
こだま:そう。その頃ってレゲエをやる若い人達が増えてきた時代だとは思うけど、自分とやるってことではなかなかメンバーって見つからない訳だよね。そこに何か……、それが縁なんだろうなあ。
エンドウ:以前のインタビューで仰っていましたが、そういう持込み音源は殆どこだまさんは聴かないですよね?
こだま:うん、確かに。
エンドウ:なぜゆえその時だけお聴きになったのでしょうか?
こだま:……、……、ベースのコウチのボクに対する感触が、その場であったんだと思うよ。
エンドウ:真摯な?
こだま:うん、熱意みたいなもの。なんかチャラい感じではない真剣な何か。
エンドウ:強引な売り込みは、「絶対に聴かない」って以前のインタビューで言いきっていましたものね。
こだま:そういいながらも、「もし自分より若い人で音を出せそうな人がいたら」って気持ちはどこかにあったのかもしれないね。ミュートビートの後に1回だけバンドってものを考えたことがあるんだ。「フィッシュマンズのリズムセクションを使って何かやりたい」って話は実は彼らにしたことがあるんだ。
エンドウ:非常に興味を惹かれる話ですね。
こだま:それも、99年のリキッドの構想に入っていたと思う。オフィシャルにも半ば承諾してくれていて。でもこの時期ってフィッシュマンズはフィッシュマンズで音楽クオリティーを上げてゆく大切な時期に入っていたんだよね。
いわゆる自分達の音楽を見つけてセルフプロデュースしだして、グイグイゆく感じだったの。そこでボクは、自分なりに言えば遠慮したのかな?
そんな経過の中で業界的には無名なやっほー!バンドが登場するんだけど、彼らは“ど”が付くレゲエをやっていた訳さ。で、数あるレゲエ好きのロックミュージシャンとかいるけどさ、丁度時代がさ〜、そんな“ど”の付くレゲエをやる時代じゃなくなってる訳だよね。それはフィッシュマンズの質感を見れば明白だよね。ベーシックにレゲエとかダブがあったとしても、表層にはもっと違うエレクトロニカなものとか、あの頃いろんなジャンルが出たじゃん、ハウスもあればジャングルもあれば、あと、……、
エンドウ:ダブステップとか?
こだま:うん、そう。その分散した。ブラックミュージックマターでレゲエ、それにエレクトロニカを混在させるとか。
でも、やっほー!はそうじゃなかったんだ。かといって、80年代の、「レゲエやってます」ってグループとも違う、つまり90年代に入ってからもルーツなレゲエをやろうとしている感触があったんだよ。「これだ!」と思った。
エンドウ:既に動いていたターンテーブルスタイルとジャンルは違えども同様のタフな太さを感じたと。
こだま:うん、そうだね。
つまりね、あんまりフィッシュマンズを持ち出すのもなんだけど、フィッシュマンズのファーストアルバムのプロデュースっていうのは、彼らはどっちかと云うとポップなロックをそれまでやっていた訳だ。そこにボクはまるまるルーツレゲエみたいなものをぶつけちゃった。そこから彼らは自分たち流に活躍してゆくんだけど。それと比較して、やっほー!バンドっていうのは既にルーツレゲエのスキル、感性はクリアしている。その地点から自分と上手く繋がってゆけば良い形になるんじゃないかと思ったんだ。イベントが迫っているんだから時間もスピードも必要だったしね。
エンドウ:これはいやらしい言い方ですが、この時点では業界的にはやっほー!バンドはまったくの無名ですよね?
こだま:うん。今、エンドウくんが言ったことはリキッドの当日“ガツン”と感じたものそのもの。
ボクとしては、「もの凄く新鮮なバンドをこだまが率いてライブをやるんだ」ってことをアピールしたかった。ターンテーブルセットのインストも、ボクかKRUSHくらいしかいない時期だったから、その2つ違う新鮮なレンジを体感して欲しかったんだけど。特にバンドに関しては、「相当なインパクトを出せる!」と確信していたんだ。
ところがね、そんなに大きな反応はないんだよ。やっぱりね、流石に業界だよ、「こいつら誰??」みたいな感じで。
エンドウ:業界を牽引してきたメディアの200号イベントというと、ある種、こだまさん周辺のスーパーセッションを期待していたんですかね?
こだま:うん、だからさ、……、「厳しいな」って……。
エンドウ:ボクは、誰も知らないフレッシュなプレイヤーで大舞台に望むこだまさんが、マイルス・デイヴィスみたいでかっこいいと思いますけどね。
こだま:うん、狙いは正にそれなの。その後、2枚とはいえKODAMA AND THE DUB STATION BANDでアルバムを出したけど、限られた人しかなかなか良いところを見てくれないんだよな。むしろその後だな、
エンドウ:ダブステバンドを一旦休止した後に、
こだま:休止というかメンバーをキープ出来なかったり、いろんな事情で。それはミュートの時と同じなんだけど、ドラマーが体調を崩したとかさ、バンドの苦労って良いミュージシャン程扱い難くなってゆくという。他から引っ張られたりして忙しくなるから。若い時のバンドではないから、自分達でがっちり固まって、「売ってこうぜ〜!!」みたいなことにはなってゆかないんだ。ミュート時代も朝本(浩文)がそうだったし、筆頭は(屋敷)豪太だよ。メジャーデビューした途端に、「オレ辞めるわ」でしょ(笑)そういうことの積み重ねでバンドに対するめんどくささを感じてしまった訳だね。
エンドウ:今回のバンドのブランクもその辺がやはり原因で。
こだま:うん、あとまあ〜、自分でソロとしてやることがあったから。
2000年の始めってボクにとって充実期に入ってきていて、メジャーもビクター/スピードスターで決まるし、プロダクションもソニー傘下のソイツァーミュージックってのに決まるしね。今にして思えば素晴らしい環境だよね。
ソロアーティストとして恵まれた環境で良質な創作活動を続けていたこだまであったが、心のどこかに何か小さな凝りのようなものを感じていた。
それは“声なき声”で感知し、やがて2人のトリガーによって白日のものとなる。
エンドウ:今回の再始動に関しベースのコウチさんの高いモチベーションがこだまさんを動かしたとか?
こだま:うん、そう。
エンドウ:えっえっ、たったそれだけでコメントはいいんですか(笑)こだまさんもバンドやりたかったのでは?YABBYさんとのターンテーブルセットも相当な深度で追求してしまったし。
こだま:そうそう、自分なりにね、……、
また新世界の話になるけど、常に斬新なものをハイペースで見せてゆくってのもそれなりに大変でさ。時代的背景、環境もあって。
ひとつのものを続けていってはいるけど、やっぱり、……“声なき声”が聞こえてくる訳さ。
まあ、声がある訳だな、「バンドなら見たいんだけど」とかね。で、それが気になるんだよね。どっかで、「バンドを」っと思うんだけど、バンドって一番贅沢だからね。しかもその贅沢をしにくい時代。
他人から、「バンドやらないんですか?」って言われると、「分かってるよ」って感じなんだよ。半面、「どれだけ大変なのか分かってるのか?」って気持ちももたげてくるよな。2000年始めから2010年くらいまでソロとしてアルバムを出して、本も出してね、「ボクはボクでいろいろやっているんです」って気持ちもあるんだよ。
でも気になってるんだよな〜、「バンドが抜けている」ってのが。
エンドウ:成る程。
こだま:コウチと時期を同じくして、ある女性のディレクターがいるんだけど、その人が急に、「こだまはバンドでないとダメ!」って言うんだな。
エンドウ:それはいつ頃のことですか?
こだま:丁度、コウチから話を持ちかけられるちょっと前。
エンドウ:昨年の夏の終わりくらい?
こだま:うんうん。その言葉に気が滅入ったんだ。「言われたくないな〜」って思った。でも、「もしバンドを本気で始めるんだったら私は絶対協力したい!」って、「真剣なんですよ!」って。そんなこと言われたら放って置けないじゃん。
エンドウ:トリガーがまずそこにあったんですね。
こだま:うん、引っかかっていて。
逆の説得?って云うの?「あんまり突っかからないでくれよ、やる時はやるから」みたいな形で。そこにもってきてコウチじゃん。
コウチにもそんな経緯は話したと思うんだよ、「他の人からもそういうこと言われるんだよ」と。コウチも、「そりゃ〜そうでしょう。だからやりましょう」と。
重々分かっているんだよバンドやる魅力は。やってきたから(笑)
エンドウ:ええ、10代から(笑)
こだま:で、コウチのオレに対するケツの叩き方が半端じゃなくってさ〜。それ以前にも会うたびにコウチには言われたんだよ。
エンドウ:「ダブステバンドやりましょうよ」と。
こだま:いや、「バンドやりたいんですけど」って。ダブステに限定している訳じゃなくって。
エンドウ:成る程。そんな中徐々に再始動の気運が高まり、最終的に集まったメンバーが第1期と多少チェンジがありました。キーボードがHAKASE-SUN、ドラムが森俊也さん。
こだま:それは悩みつつ、いろんなメンバーのチョイスを考えたんだけど。
エンドウ:ボクは非常に、「妥当なラインナップに落ち着いたな」との感想を持ちました。
こだま:うん、その時の自分の勘だよね。森俊也はマイちゃんやてちゃんのバンドで常に関わりがあったからさ。ロッキンタイムのアルバムもオレ1枚やっているし、「よく分かっている」ってことはある。
エンドウ:HAKASE-SUNは言うまでもなく。
こだま:うん。
エンドウ:先日のライブに伺えなくて大変申し訳なかったのですが、楽曲は当然こだま作品中心に、
こだま:うん。
エンドウ:ミュートビートの楽曲もやられた?
こだま:うん、やってる。まだ、オリジナルの曲を揃えてって訳にはいかないからね。
エンドウ:今後はオリジナルも作ってゆく構想で?
こだま:そこはまた自分勝手なリスナー達の声なき声があってね。
過去の曲を求める人と新たなオリジナル曲求める人とが二分する。
そこはネガティブな話になっちゃうから手短に話すけど、「自分が今までやってきた曲をどれだけ聴いてくれているのかな?」ってのがあるんだよ、まだまだ。新しい曲でバンドをスタートさせるっていうのは、そのバンドが若くて初々しい頃に組んだんだったら、そこで凝縮されて、「何かやろうよ!」みたいなことになると思うんだけど、……、ダブステーションバンドの今のメンバーってレゲエマターで云えばスーパーグループなんだよ。ボクはさておき、メンバーは他のところでも活躍している訳だし。だからパーマネントな駆け出しのロックバンドな感じにはなかなかならない。
説明になっちゃうとまずいけど、……、
まあいいや、とにかくさ〜、新たに新しい曲をやるには環境が整わなくてはダメなんだ。新しいものを生み出す訳だからさ、そこには時間も必要。
エンドウ:カバーセンスにしても一流なメンバーですから、その辺もオリジナル楽曲以前に大いに期待したいです。
こだま:そうそう。
オリジナルか?カバーか?っていうのもさ、時代的にもカバーが非常に浸透している状況だよね。「カバーズ」って音楽番組があったり、忌野さんは随分昔に『カバーズ』ってアルバムを出してる訳で。そんなに良いものがあるんだったら、ヒップホップのサンプリングを鑑みても、あと、コラージュとかリミックスとか。
エンドウ:バンドの皆さんのキャリア的にセルフカバーでも十分クリエイティブですし、例えばHAKASE-SUNの過去の楽曲があってもいい訳ですよね。
こだま:そうだよ。それはコウチにも言ってあるし。ダブステーションバンドのライブの中でね、「自分達の曲もやっていいよ」って。でも、その前にやることがまだまだあって、なんせ1回ライブやっただけだからね。
エンドウ:実際、年末の感触はいかがでしたか?
こだま:やっぱり、「バンドは豊かなものだな〜」と思いましたよ。
エンドウ:リハの段階でボクにはかなりの好感触を告げられましたが、本番の演奏も十分に納得されましたか?
こだま:うん、「これからやっていこう」ってことだったよね。
再始動に於いて新たなヴォーカルチューンが追加されたという。
『もうがまんできない/じゃがたら』※通称もうがま。
その選曲動機には新世界でのライブ活動が大いにあったとこだまは語る。
それは、その曲をこだまが歌唱したイベントの企画者である筆者には何にも変えられない嬉しい出来事だ。
エンドウ:なんでも、もうがまをやられたとか?
こだま:やってますよ(当然感満載で)これは新世界のじゃがたらイベントで鍛えられた(笑)
エンドウ:ガハハハハ(爆笑)
こだま:やっぱり今度バンドをやるんだったらじゃがたらに限らず歌を唄いたいな〜と思って。
エンドウ:バンドでは過去唄ってなかったでしたっけ?
こだま:全然唄ってないよ。
エンドウ:ライブで唄うのはターンテーブルセットから始ったんですか?
こだま:うん、そうだよ。
エンドウ:確かに当初は皆驚きましたものね。
こだま:それがつまり試業期間みたいなもんで。それの前がカラオケスナックだから(笑)
エンドウ:ガハハハハ(笑)はい、カラオケは同行したこともありますけど、流石にじゃがたらナンバーはないですよね(笑)
あっ、そういえばYABBYさんがまるがけでアケミさんとユニゾンでもうがまをステージで唄ったことがありましたね。
こだま:うん、あったね(苦笑)じゃがたらの曲増やしていこうかな?
エンドウ:おお、いいですね。『タンゴ』とか?
こだま:うん、『(ある)平凡な男の一日』と。バンドで。
エンドウ:良いですね。今回の再始動に関し当初からじゃがたらチューンもそのモチベーションに含まれていたんですか?
こだま:うん、あるよ。だって皆、じゃがたら、じゃがたらって言う割には誰もカバーしないっていう。だったら、「オレがやってやろう」と。じゃがたらファンのことを思ったりするとそれも勇気のいることだったけど、
エンドウ:もう4回やっちゃって、意外と評判良いし。ガハハハハ(爆笑)
こだま:ガハハハハ(爆笑)でも唄は誉められなくていいよ(笑)そのほうがかえって楽だ(笑)
エンドウ:ガハハハハ(爆笑)
こだま:そうだ、でももともと唄うようになったのがダブステーションバンドの『MORE』ってアルバムの『黄金の花』が切っ掛けだからね。
エンドウ:じゃあダブステーションバンドが切っ掛けで一周ぐるりと廻ってきたんですね。
こだま:更に言えばMCはおろか唄うことなんて。ミュートの頃は豪太は唄いたがってね、何曲も唄うんだよ。それなのにこだまが唄うってことは圏外だから。
エンドウ:たしかに当時はそのイメージはこだまさんにはなかったですね。
こだま:全然ないよ。何を言いたいかと言うと、このこだまが、「歌を唄わせてくれ」って言って(笑)OKしてくれるメンバーとやりたかった訳(笑)
エンドウ:ジャズの最初期はペットの人は唄う人多くなかったですか?サッチモを始め。
こだま:いや〜あれは大巨匠だからね!ガハハハハ(爆笑)
エンドウ:ガハハハハ(爆笑)
こだま:それはあまりにおこがましいよ(笑)
でもね、「自分は唄えるんだな」ってところから歌は始るよ。……、あれ、……、やっぱりね、……、……、カラオケだよ。ガハハハハ(爆笑)
エンドウ:ガハハハハ(爆笑)
エンドウ:この5年半新世界を常打つ箱としてターンテーブルセットを深度深く追求されてきました。それと対比したバンドサウンドとはどういうものなんでしょうか?ボクは内宇宙から外宇宙へ推移した感じなのかと?
こまだ:内宇宙と感じたのは追いつめられているってこともあるよ。
エンドウ:途中、手術を受ける等体調との闘いもありました。
こだま:体調もあるし、自分の年齢。逆算になってゆくというか。そうすると、「やれることをやれ」ってことと、「やりたいことをやってしまえ」ってことがあるじゃない。DJ YABBYとのセットはYABBYが納得してくれているなら、あとは全責任自分ってことだよね。
エンドウ:こだまさんが繰り返し言う“完全なる自由”?
こだま:そう。それを新世界でやらせてもらえた訳だよ。とやかく言われないっていう。
新世界の場のプロデュースとしても、「いいですよ」と。音楽実験室という担保もあるじゃん。でも。バンドはそうはいかない訳よ。
「ええっ、こだまが唄うわけ!?」なんて。
エンドウ:でも新世界のアクトはその分自分が相当に摩耗する。
こだま:うん。
あれはお客さんは近いし、もの凄く耳の良い人達が、リスナーが、それは10人かもしれないし100人かもしれなけど。つまり老舗のライブハウスじゃない訳。白紙の状態で出演者のラインナップだけ見て足を運ぶっていうのがどういうお客さんか?ってことだよね。そこ始まりで続けてきたんだからそりゃ〜濃密だよね。
エンドウ:その濃密さが飽和する前に、前述の女性プロデューサーやコウチさんのアプローチがあったってことが、実直な表現活動を行ったきたゆえの速やかな移行のようにボクには感じるのですが、新世界のクローズも含めて。
こまだ:勿論それはあるでしょうね。コウチは元メンバーでありながら新世界のライブにチケット買って来ていたからね。
エンドウ:そうなんですよね。素晴らしい。
こだま:そこでもまた思うところがあったんじゃないかな〜?「どうしても生で後ろでベースを弾きたくなる」ってコウチは言っていたし。
エンドウ:さて新世界でのこだま和文最終アクトもKODAMA AND THE DUB STATION BANDでの出演となりましたが、バンドの今後についてコメントを頂いて本日はお開きにしたいと思います。
こだま:音源を出したいよね。まあ、自分が新しく曲を作ってオリジナル曲をやるようになるまで昇華できたらいいですよね。
エンドウ:新世界の大詰めのFinal Special 4daysの第三夜、3/30でのご出演が決まりました。その辺の抱負もお願いいたします。
こだま:皮肉なもので数年に渡ってさ〜、バンドってものを実現出来なかったボクがまたバンドやりだしてさ、いよいよバンドとしては、「これからだ」って時に。まず最初は新世界でデビューしようと思っていたんだよ。
エンドウ:ええ、そんなお話も頂きましたね。
こだま:うん、それが皮肉にも新世界のファイナルで自分のバンドで出ることになるっていうね。それも含めて、「ボクにとっての新世界だ」って思うの。
最後であってもこだまがやったバンドをね、とにかくあのステージで1回やって次に行くっていうね。それが実現出来て、「ありがたい」って思いますよ。本当に。
だから、終わって行くものと始るものが常に交差するっていうね。むしろ最後であっても重い腰を上げて始めたバンドのステージが出来るってことの喜びの方が大きいです。
エンドウ:本日は貴重なお時間を頂きありがとうございました。
新世界での5年半の実験を経て、遂にバンドへ帰還したこだま和文。
3/30新世界最終ギグをこちらも新世界縁のメンバー勢揃いのファーストコール集団THE DUB STATION BANDと決行する。
音楽実験の果てに現れる景色は新世界から新次元へ?
こだま和文の開けた新世界の最終章を絶対に見逃すな!
(国立シュベールにて取材)
Ⓒ門井朋
こだま和文(from DUB STATION)/プロフィール
1982年9月、ライブでダブを演奏する日本初のダブバンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。
ファースト・ソロアルバム「QUIET REGGAE」から2003年発表の「A SILENT PRAYER」まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。
2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして「IN THE STUDIO」、2006年には「MORE」を発表している。
プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム「チャッピー・ドント・クライ」等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN'、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。
近年、DJ YABBY、KURANAKA a.k.a 1945、DJ GINZI等と共にサウンドシステム型のライブ活動を続けているが、2015年 12月、KODAMA AND THE DUB STATION BANDを再始動。メンバーは、こだま和文(tp.vo )、AKIHIRO(gr)、コウチ(bs)、森俊也 (dr)、HAKASE-SUN (key)。
また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。
著書に「スティル エコー」(1993)、「ノート・その日その日」(1996)、「空をあおいで」(2010)。ロングインタビュー書籍「いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった」(2014) がある。