子どもたちを守るお母さんに希望の光を  鎌仲ひとみ

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子どもたちを守るお母さんに希望の光を  鎌仲ひとみ

『六ヶ所村ラプソディー』をはじめとする“核をめぐる3部作”で知られる鎌仲ひとみ監督。福島原発事故後に耳を傾けたのは、子どもを被ばくから守ろうとする、お母さんたちの「小さな声」だった。

文・甲藤麻美/写真・伊藤 郁

ー『小さき声のカノン』は、福島とベラルーシで被ばくから子どもを守ろうと奮闘するお母さんのドキュメンタリーです。今回お母さんを中心に映画を撮られたのはなぜですか。

鎌仲 この映画は「子どもを被ばくから守りたい」という想いを込めてつくりました。世間が何と言おうと、自分の子どもを被ばくさせたくない。そう思えるのはお母さんだと思ったんです。映画に登場するお母さんたちの頑張りは、映画を見たお母さんが内に秘めてきた想いにも、きっと届くはず。本当は女の人って男の人よりずっとたくましいでしょう? そのパワーが動き出せば、今の福島の状況を変えられるのではないかと思っているんです。

ーお子さんの学校について語るお母さんに対し、鎌仲さんがストレートに意見するシーンもありました。

鎌仲 学校や政府といった権威の言葉に従うのは、子どもがいじめられないように、と願う親心でもあります。そうとは知りながらも、国に守ってもらえないことがわかった今、どういう生き方をしていくかは自分で選択しなくてはならない。そのことを伝えたかったんです。



ー「選択する人々」は映画の副題にもなっています。

鎌仲 選択する人々というと、避難した人のことだと考えがちです。ただ、留まっている人たちも、何らかの選択をしてそこにいる。一番の問題は、目を背けて何もなかったことにしようとしている人の多いこと。留まることを選択したのなら、そこでできることをして命を守っていくしかないんです。

ーその「できること」を探しにベラルーシに行かれたのですね。

鎌仲 前例のない話では、危険か危険じゃないか、専門家でも判断できません。福島とチェルノブイリ原発事故発生には、25年の差があります。ベラルーシでは事故発生から何が起きて、どういう対処が功を奏するのかという蓄積がある。それを学びたいと思ったんです。

ーそのなかで、一定期間汚染地域を離れて生活する「保養」が効果を上げていました。

鎌仲 ベラルーシでは子どもなら21日間、大人なら45日間の保養で、体内から放射性物質が排出され、半減することが実証されています。移住が難しい家庭でも、1年に1ヶ月保養に出すだけで、子どもの体調を劇的に改善させることができるのです。被ばくというのは、時間の経過によって積算されて濃くなっていきます。これからが本当に大変なんだということをしっかり認識し、現実と向き合ってほしい。同時に、保養文化を根付かせ、長い将来にわたって継続していく必要があると感じています。

ー保養によって放射性物質が半減する。自分たちで測り、除染する。食材を適切に選ぶ。「できること」が提示されているこの映画には、希望も感じます。

鎌仲 この映画は、福島のなかでも限られた部分しか映していません。現実はもっと複雑で、多くの人が我慢している。そういう人たちにも、希望を持ち続けてほしいんです。子どもを被ばくから守ることはできるんだということを、映画を通して多くのお母さんに知ってもらいたいと思っています。

PROFILE 鎌仲ひとみ
フリーの映像作家としてNHKなどで映像を制作。福島原発事故以前から“核をめぐる3部作”(『ヒバクシャ』『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』)を発表。最新作が『小さき声のカノン』。



MOVIE 小さき声のカノン
被ばくから子どもを守る、お母さんたちのドキュメンタリー映画。3月7日のシアター・イメージフォーラム(渋谷)、フォーラム福島(福島)を皮切りに、札幌、仙台、名古屋、大阪、京都、北九州など、全国で公開が決定している。




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