岡山へ no.1 東日本大震災以降、西日本に移住する人が多いという。岡山はそんな人たちが目指す場所のひとつだ。生活はどうしているのだろうか、住んでいる人たちとのつながりは……。

ローカル(日本)

岡山へ no.1 東日本大震災以降、西日本に移住する人が多いという。岡山はそんな人たちが目指す場所のひとつだ。生活はどうしているのだろうか、住んでいる人たちとのつながりは……。

瀬戸内海に面し、山や川も多く、風光明媚な景色のバリエーションが豊かな岡山は、温暖な気候と自然災害が少ないことでも知られている。最近、この地を移住先として選ぶ人たちが多く、また、〝農〟に接している人たちも増えているという話を聞き、岡山に関心を持った。岡山には、長年、88のフレンドショップとしてサポートしてくれている<コタン>がある。ここを足掛かりに岡山に行くことにした。

文/写真・片岡一史

作り手の情熱を伝える〜自然食品店<コタン>

 <コタン>は、岡山駅西口徒歩5分という場所に、2005年に開店した自然食品などを扱うお店だ。店内にはオーガニックの野菜や調味料などが並ぶ。

「10年ほど前、この向かいにある<The  Market>の天然酵母パンとの出会いから<コタン>が始まったんです。パンと出会い、<The  Market>に出入りするようになったんですが、ある日、当時のオーナーと、オーガニックってなんだろう?っていう話で会話が盛り上がって、自分の考えるオーガニックなお店をやりたいと思った。それがスタートです」

隣のおばあちゃんが作ってくれた多少農薬を使っている野菜と、誰が作ったかわからないけれども有機認証のついている野菜。どちらがオーガニックか……。

 <コタン>の代表、近藤英和さんは、隣のおばあちゃんの野菜を選びたいと答えた。



「隣のおばあちゃんとは話ができます。農薬もどんな農薬を使っているか把握できます。草取りが大変で農薬を使うのであれば、『おばあちゃん、農薬が気になるんだよ。草取り、俺が手伝うから、農薬を使うのやめないかい?』っていう提案ができます。何より人との繋がりがある。人との関係も有機的。それこそオーガニックだと思うんです。作り手が見える店、作り手のことを伝えられる店、しかも商品が素晴らしい。そんな店をやりたかったんです」と近藤さん。




売っている商品、マテリアルがオーガニックなだけでなく、人との繋がり、関係もオーガニックであることを目指してきた。そうは言いながら、このコンセプトを継続するのは難しい。

来年で10年。最初は、ふたりの農家が生産する有機の野菜とお米。高知の「山塩小僧」という塩、小豆島の醤油からスタートした。

<コタン>のスタートを語る上ではずせない商品のひとつが小豆島の醤油、「ヤマロク醤油」だ。

近藤さんは、小豆島に醤油を探しに出かけ、「ヤマロク醤油」と出会った。

「いろいろな醤油屋を回り、醤油づくりを知ることができました。『ヤマロク醤油』もそのひとつです。『ヤマロク醤油』は、今の、工場で生産する醤油のことも理解していながら、それでも、杉樽で醤油を作り続ける。時間も労力もかかり、採算は合わないけれども、それでも続けているのは、本来の醤油づくりを伝えていかないといけないから作るんだって言っていたんです。こういうものを売りたい。作り手の情熱を伝えながら売る。それが<コタン>の原点です」と近藤さん。

フレッシュジュースがのどに気持ちいい〜マルゴデリ



近藤さんに岡山市内にある、これも88のフレンドショップの<マルゴデリ>に連れていっていただいた。

「マルゴの名前は、もともと、最初にお店をはじめた田町に、マルゴというゴム工場があったんです。その工場の跡地を再利用できないかと。建物に大きく、マルに5のマークがありましたから、それをもらおう。それでデリカテッセンのデリをつけて<マルゴデリ>としたんです」と代表の平野裕治さん。



最初、コーヒーショップからスタート。フレッシュジュースも出すお店だった。

「フレッシュジュースの人気が出まして、これにこだわろうと。系列でもある<コタン>のオーガニックな素材を使ってジュースを提供するようになったんです」

今では岡山市内に<マルゴデリ>は5店舗ある。東京の恵比寿にも<マルゴデリ>がある。恵比寿の店は、ヘンプウェアなどを扱う<juzu>の系列店なので、資本こそ違うものの、そのコンセプトは同じだ。

岡山が地元だという平野さんに岡山はどういうところか尋ねた。

「晴れの日が多い。だから農作物が豊富です。それから、自然災害が少ない。それと、以外と保守的な土地柄で、商売は厳しい。名古屋もそうらしいんですけれども、岡山で商売ができたら全国どこでも商売ができると言われているようです」

農業というチャレンジを実践する〜ワッカファーム

 <コタン>で最初に扱った野菜の生産者のひとりが佐々木竜也さんだ。現在、<コタン>と同じ系列として、農業法人<ワッカファーム>が有機野菜を生産、<コタン>が流通を担うという強力な関係を保っている。

佐々木さんは、どうして農業を志したのか?

「2000年の〈いのちの祭り〉から始まったんです。カウンターカルチャー、その流れのなかで、いろんな人が試みて、挫折もあっただろうし、継続している人もいるだろうし、そんな流れを自分も実践していきたいという思いがあったからなんです」と、佐々木さん。

音楽、仕事、経済そして生活。どうやってバランスをとったらいいのか。そのひとつの答えが〝農〟だった。野菜づくりを学び、それから家族で農園を作った。

「<コタン>で野菜を買ってくれて喜んでくれる人がいる。これは大きかったですね」

 <コタン>が営業を始めた頃、佐々木さんは奥様とふたり、自給するための野菜を多めに作り、<コタン>に卸していたという。

「仕事にしよう、農業をやろうと思ったら片手間ではできない。農業をやる。それ自体も自分ではメッセージだと思っています」

〝農〟から〝農業〟へ。外から見ると、一見、自然にも思えるが、この流れを作るのは容易なことではなかっただろう。



土とともに暮らす〜ワッカファーム

佐々木さん自身のメッセージを秘め、農業法人<ワッカファーム>を立ち上げた。農場は、岡山市内から車で30分ほど走った瀬戸内市にある。瀬戸内海沿いの道から細い農道をしばらく走ると、両脇を里山にはさまれた畑が広がっていた。10年前、佐々木さんたちがここに来た当初は、かつて田畑があったとは思えないほど荒れていたという。

「普通の山のようでしたね。草だけじゃなくって木も生えていた。道もない。地籍図をもとにして、少しずつ木を倒し草を刈っていきました。そうすると、水路が出てきたり、だんだんと畑らしくなってきて、その光景に出合った時はうれしかったですね」

里山に挟まれた一角とは言っても、ここの地権者は20件近くある。ひとつひとつの家をまわり、許可を得て、荒れ地を整え、〝農業〟ができるまでになった。続けていくうちに理解者も増え、地元の方が、農道の整備に助言してくれるまでになった。

現在では、佐々木さんご一家だけでなく、ふたりの社員も、ともに暮らし、農業を営んでいる。

そのひとり、ユウジロウさんは<ワッカファーム>に来て2年になる。

「音楽が好きで、東京のライブハウスで仕事をしていました。だけど、何のために仕事をしているんだろうって疑問を感じ始めて。東京で暮らしていると家賃や光熱費、食費……そのために仕事をする。これがやりたかったのかなって。やりたいことって何だろう。生きていることが仕事にもなっている、そんなライフスタイルを目指したい。それで最初ウーフで経験して、ここにいるようになりました。最近やっと農業をやっているって実感できるようになってきました」と、ユウジロウさん。

もうひとり、アキラさんは前職、キャンプ場の運営スタッフだった。

「ここに来る前から自然な暮らしがしたいと思っていて、普通の仕事はできないって思ってたんです。最初、ウーフでここに来て、ここにいると無理をしていない自分がいるって思って、それで続けています」と話してくれた。

ふたりともウーフが〝農〟に接するきっかけになったと話していた。

<ワッカファーム>、<コタン>、10年が経ち、ひとつひとつ形になっているように見えた。今年は<ワッカファーム>で栽培した小麦で天然酵母パンを作って販売するという。


<ワッカファーム>のスタッフ。
アキラ、ユウジロウ(後左から)、佐々木さんご夫妻(前列)

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コタン TEL 086-214-3539

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