岡山へ no.2 東日本大震災以降、西日本に移住する人が多いという。岡山はそんな人たちが目指す場所のひとつだ。生活はどうしているのだろうか、住んでいる人たちとのつながりは……。

ローカル(日本)

岡山へ no.2 東日本大震災以降、西日本に移住する人が多いという。岡山はそんな人たちが目指す場所のひとつだ。生活はどうしているのだろうか、住んでいる人たちとのつながりは……。

文/写真・片岡一史 

〝市〟を起点に、地元と移住者がつながり、生活が営まれている

その日は<ワッカファーム>のみんなが暮らす<錦海寮>に泊めていただき、翌日、同じ瀬戸内市で行われている〈備前福岡の市〉を見に行った。

岡山県瀬戸内市長船町福岡は、かつて備前福岡と呼ばれた町。〈中世福岡の市〉で有名な場所だった。かつての姿を取り戻し、地元の特産品などを売り、地域活性化につなげていこうと、地元の〈一文字うどん〉などが中心となり、2006年3月から毎月第4日曜日に定期的に開催されているのが〈備前福岡の市〉だ。

地元の野菜や特産品などだけでなくコーヒーを販売する店やカレーの店もあり、地元の太鼓などの出し物もある。



〈備前福岡の市〉だけでなく、岡山では、毎週末、どこかで〝市〟がたっている。毎月第3日曜日(1、2、7、8月は休み)は西川緑道公園(岡山市北区)で〈有機生活マーケットいち〉が、毎月第1日曜日は京橋西詰め旭川河川敷広場(岡山市北区)で〈京橋朝市〉が、という具合に。

 「東京から来た? 88の取材! うちも置いてたよ、88。今はお店ないけど、ありがとうね! カレー、食べてって」と声をかけてくれた<ちゃかぽこ洞>のコウジさんも、毎週末、どこかの〝市〟に出店し、いまは、出店だけでなんとかやっているという。「今は月に4日しか働いてないよ」と笑う。かつては群馬県桐生市でカレーショップを営んでいたものの、2011年3月11日、そして12日を経て、小さな子供がいたこともあり、知り合いをたよりに岡山へ。最初は友人宅で寝泊まりしながら生活のベースを模索していた。

「見てよ、この写真。これを直して、今、住んでいるんだよ。全部廃材を使ってね。大家さんは解体費用が大変だから住んでくれたほうがいいって。田んぼも借りてるし。今はまだカレーのお米は地元のものを使っているけど、先々、自分で作ったお米でカレーを出したいね」と、コウジさん。荒れた古民家を借り受け、自分でリフォームし、住み始めている。


<ちゃかぽこ洞>コウジさん


〝市〟では、移住してきた人と地元の人、旅行者、みんなが垣根なく繋がり会話している姿があった。そしてコウジさんのように〝市〟を中心に生活をしている人たちもいるようだ。

埼玉で5年続いた〈てのひらまつり〉を岡山でも開催

〈備前福岡の市〉を後にし、コウジさんが寝泊まりしていたという友人宅でもあったアキシホこと、佐伯さんご一家、アキさんとシホさんを訪ねた。

佐伯さんは、草木染めなどを手掛けているアーティストだ。以前は茨城県に住み、埼玉県長瀞で行われていた子供をテーマにしたまつり〈てのひらまつり〉をオーガナイズしていた。長瀞での〈てのひらまつり〉も5回を数えた。

「ドネーションと飲み物や物販で資金を調達して、参加者はみんな同じラインで表現者ということでやっていました。参加してくれていたアーティストも『来年は、あれを作ろうか』とか、盛り上がってきて、いい感じになっていた頃だったんですけどね」



2011年3月11日を境に生活が一変。

「東海村からも近いし、すぐ、西に行こうと高速に乗ったんです」

向かった先はアキさんの実家もある大阪、そして岡山へ。

「最初は鹿児島に行こうと思っていたんです。<コタン>の近藤さんの家に泊めていただいて、お店を見てから出かけようと思っていました」

お店で、野菜を納品に来た方と話をしていて、今日、古民家の改装記念パーティーをやるから来ないかと声が掛かり参加。その古民家に住んでもいいという話で盛り上がり、ともに行動し避難していた数家族とともに共同生活が始まった。

「まきでお風呂を焚くのも1日仕事。改装した古民家とはいっても、まだまだ汚れていたから掃除をしなければいけない。それはそれで毎日けっこう忙しかったんですよ」とシホさん。

しばらくして誰も住まなくなった家が見つかりそちらに移り、ひとつひとつ自分たちで改装しながら住んでいる。

茨城在住時代、〝農〟の経験はあったものの、時間を取られることが多く、自分たちの創作活動にストレスが及ぶと止めた。しかし、311を期に食べ物を再考。岡山では、田んぼと畑を再開した。

「田んぼと畑は自家用の野菜などをいろいろ作っています。それから5畝ぐらい豆を作っていて、『てのひらみそ』を仕込んでいるんです。100kg以上あるかな。これを〈てのひらまつり〉の運営資金の一部にあてようと。一昨年は、豆の畑、鹿に荒らされちゃいましたけど」とアキさん。

「秋からはリネン、亜麻を多めに作ろうかと思ってます」とシホさん。


アキシホさんご一家

そんな話しを聞いていた<コタン>の近藤さんが話してくれた。

「311以降移住してきている家族で、田んぼや畑をやって、〝農〟をベースにして食べるものを作って、何かモノを作って、〝市〟や〝まつり〟で売って、楽しみながら暮らしている家族が増えています。売るモノも、仕入れるのではなくね」

「モノづくりを基本にしていても、スイーツを焼いて持っていって売ったりね」と、アキさん。

アキシホさんたちは、岡山に来ても、〈てのひらまつり〉を企画。今年も8月22日〜24日、備前市八塔寺ふるさと村望ケ丘キャンプ場で、8回目の〈てのひらまつり〉が開催される。

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