縄文の心得 no.2 黒曜石よもやま話

ローカル(日本)

縄文の心得 no.2 黒曜石よもやま話

文・草刈朋子(縄文ライター)/写真・廣川慶明
 
人類の道具のルーツをさかのぼれば、石を割って作られた素朴な石器に辿りつく。石器に使用された素材は各種あるが、代表的なものに黒曜石がある。溶岩が急激に冷えて固まったガラス質の石で、表面が剥離する性質を活かし、縄文時代以前からナイフや石槍、矢じりなどに加工され、道具の原点となった。

黒曜石は押して剥ぐ「押圧剥離」という手法で加工される。それが鹿角で行われるのだと教えてくれたのは、縄文式土器を作る造形作家の平田篤史さんだった。子どもの頃に縄文人として生きることを決めて以来、粘土などの素材や自らの食料をなるべく自然から調達するよう心がけている平田さんは、黒曜石についても当然詳しく、自分で狩猟した鹿の角を使って石器も作っている。そんな平田さんを雑誌『PAPER SKY』の縄文特集号で取材することになったので、かねてから気になっていた石器について聞いてみた。ちょっとマニアックな話ですがお付き合いください。

–––– ところで石器に興味を持ち始めたのはいつ頃なんですか?

平田 小学生の頃から土を採ってきて土器を焼いていたので、その延長で石器も作りたくなって河原に行っていろんな石を割るようになったのが始まり。

–––– 石器に適した石ってどう見分けるんですか?

平田 ガラス質の特性で貝殻状に割れれば石器として使える石。黒曜石の割れ方はどこの産地のものでも想像がつくんだけど、石器でよくあるチャートとかホルンヘルスという石は黒曜石みたいに割れるものもあれば、そうじゃないのもあっていろいろ。見つけたらとりあえず割るようにしているね。

––––  やっぱり、質がいいのが見つかったら、うれしい?

平田 持って帰れるうれしさよりも、そこにいた人たちがこの石を使ったんだ、ということにしびれるよね。黒曜石を見つける面白さは、そこかな。この石を使っていた縄文人の技術にどこまで近づけるだろうかって思うよね。

–––– 平田さんの黒曜石の切れ味はいいですもんね。

平田 北海道にあるアイヌ文化を実践するグループに参加して冬にエゾシカ猟をやっているんだけど、解体する時はいつも黒曜石を使うようにしているんだ。死んだばかりの鹿は、皮に黒曜石で切れ目を入れるとずるっと剥ける。はいだあとの皮についた脂肪や肉を落とす時にも使える。使ってみるといい道具だということがわかるよ。

–––– 縄文人もそうやって使っていたんでしょうか。

平田 ただね、縄文人は石器の技術は旧石器人に劣るんだよ。つまり縄文時代になると温暖化で大きな獲物はいなくなるから石槍は作らなくなるし石器作りの技術はどんどん失われていく。1万7千年とか2万年前の人の方がはるかに石器作りの腕は上なんだよね。

–––– 平田さんとしてはやはりそこに憧れますか?

平田 憧れるね。あの時代には、神子柴系石器群のように20㎝の長さもある黒曜石の石槍が作られていた。折らずに作れるなんて相当な精神力が必要だよ。あの美しい石槍は俺の生きている限りの究極の理想。そこに到達したい。あれが作れたら死んでもいいと思っているんだ。

石器について語る平田さんの目はとても輝いて見える。その目線の先には、加工技術だけではなく、石を探すセンスや見分けられる目を伴った旧石器時代人の総体像が浮かび上がっているのだろう。

平田さんは、2014年12月29日に代官山UNITで開催の音楽イベント〈ONENESS MEETING 〜縄文と再生〉で石器による鮭解体ショーを行なった。2013年に引き続き、解体に使う石器も黒曜石の原石から割りだし、鹿角で成形して作る。石をただの石と思わなかった先人の智慧に敬意を表し、黒曜石でさばいた鮭の料理を味わいたいと思う。

ONENESS MEETING 2013〜縄文と再生にて黒曜石の石器で鮭を解体する平田さん。
解体した鮭は、狩猟推進ユニットHUNTによって鮭汁にし、ふるまわれた。

NPO法人jomonism

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  88 38号(2014.10.30)

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