砂が舞う土地に緑の森を 中国内モンゴル沙漠化事情 no.1    なぜ沙漠が広がっているのか

トリップ(旅)

砂が舞う土地に緑の森を 中国内モンゴル沙漠化事情 no.1 なぜ沙漠が広がっているのか

文・B.セルゲレン 写真・片岡一史

飛来する黄砂

中国の沙漠化は、日本にとって、無縁の問題ではありません。
春になると飛来する黄砂。その悪化が沙漠化とも密接に関係しています。
中国内モンゴル自治区でも沙漠化が大きな問題になっています。
拡大を続ける沙漠に居住地域が侵され、他の地に移住しなければならない家族がいます。また、風に巻き上げられた砂が吹き荒れ、ゴーグルをしなければ外を歩けない日が長く続いたり、目の充血がおさまらない子供もいる。道路が砂にうずまってしまい四輪駆動の車でなければ行けなくなってしまった村もある。経済的にも苦しく、暮らしもままならない。切実な問題となっています。

広い乾燥地帯

アメリカ合衆国は、国土の42%が開墾可能な土地だと言われています。それに比べて中国は、全土の10%未満とも、12%ぐらいとも言われるほど、農業に活用できる土地が限られています。乾燥、半乾燥地帯が非常に広く、年間降雨量が300ミリ以下という地域が多いのです。新疆ウイグル自治区、チベット自治区、青海省のほとんどが、本来は開墾に向かない土地なのです。

それにも関わらず、農地として開墾しなければならなかった。食料確保のために。社会の発展のために。

中国には、現在13億以上といわれる人々が暮らしています。食料自給率は、2008年、95%に達したといいますが、現在の人口規模から考えると、たとえ1%減っただけでも、大きな問題になります。逆に1%上がっただけでも革命的と言われるのです。

沙漠化の人的要因 1 開墾と伐採

歴史的に沙漠化に至る過程をたどってみましょう。

1950年から51年ごろ、朝鮮戦争が終わった後、帰還兵士の多くが農業集団として内モンゴルに派遣されました。

それまでの開墾は、比較的小さな、自給自足のための住民規模だったのですが、帰還兵士たちによる開墾は、大型トラクターなどを利用した広範囲な開墾でした。彼らは、旧ソ連との国境警備の役目も担いながら大規模に開墾、農業に従事していきました。人が集まるとエネルギーも必要になる。燃料にするため、木を伐採して利用しました。

また、1958年以降、各地に製鉄工場が作られ、油分を含んだ灌木が、利用されました。現在沙漠化の問題を抱えている通遼市、ホルチン地区では、このためにほとんどの灌木が伐採されてしまったといいます。

ほかにも、露天掘りで石炭を採掘する櫓を組むために木が伐採されたり、鉄道の枕木に使うため、電話線の敷設のために、太い木を数多く必要としました。

急激な社会の発展と人口増加のために、広大な土地が開墾され、木が伐採され、青々と広がっていた草原や森は、次第に、砂の脅威にさらされる危険な状態になっていったのです。

沙漠化の人的要因 2 放牧

1978年に中国では?小平氏による経済改革が行われ、今まで人民公社で共同でしか資産を持てなかった人々が個人で資産を持てるようになりました。改革開放です。内モンゴル自治区のような牧畜地域では、家畜が各家庭に分配され、増やすことによって自分たちの生活が豊かになれることが可能になりました。

一方で、草原の使用権が未確定のまま共有地として多くの家畜が入り交り、今までの合理的な草原利用が不可能となりました。また、草原の利用にも多くの変化が生じ、いたるところで開墾、伐採などが行われました。その後、85年に中国で初めて草原法が制定されましたが、罰則がないため草原の開墾、伐採に歯止めをかけることは出来ませんでした。



動き出した植林事業

北京から北に70キロほど行くと、そこはもう、内モンゴル自治区になります。それほど、内モンゴルと北京は近いのです。広がる沙漠に政府も危機感を抱きます。

1979年、「三北防風林プロジェクト」を発表します。北西、北、東北方面、北京を中心にした地域で防風林を作りましょうというのが、「三北防風林プロジェクト」です。これはスローガンの域を出なかったのですが、85年には、草原法という法律を制定し、草原を守るために動き出しています。

現在は、中国も経済的に発展し、積極的に植林を実施し、沙漠化防止に乗り出しています。

92年からは、日本の鳥取大学乾燥地研究センターを中心にした団体が、内モンゴルで植林活動をはじめました。

現在も、いくつかのNPOやボランティア、企業が内モンゴルで植林を続けています。

沙漠化に学ぶ環境問題

内モンゴルの沙漠化は、異常気象によるところもありますが、その原因の多くが、過去の無理な開発や乱放牧など、人的な原因によるものです。これは、中国だけの問題ではないはずだと考えています。それは、日本も黄砂の影響を受けているという直接的な理由だけでなく、沙漠化は、人間のエゴが環境を脅かし、他の生物や植物を危険な状態にし、逆に自然の怒りにふれてしまったという、ひとつの例だととらえることもできるからです。

私は、沙漠化防止植林活動を通して、いろいろな人たち、企業と出会い、国や民族、組織の枠をこえて、ひとつの問題に立ち向かって協力できることを学び、また、その方々には、言葉にできないぐらい感謝をしています。

今、人類が直面している数々の環境問題は、沙漠化問題と同様に、多くの人たちの理解と協力なくしては解決することは難しく、「人のこと」「他の国のできごと」と傍観するのではなく、みずからの身近な問題としてとらえ、解決しようとする努力が必要なのではないかと感じています。

内モンゴルでは、少しずつではありますが、だんだんと緑が増えてきています。



PROFILE   B.セルゲレン
中華人民共和国、内モンゴル自治区出身。内モンゴル沙漠化防止植林の会代表。1994年より日本に留学し、東北大学、東京大学に通う。政治学を学ぶかたわら、自らの故郷であるホルチン沙漠の植林活動を積極的に推進。

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