砂が舞う土地に緑の森を 〜中国内モンゴル沙漠化事情 no.4

トリップ(旅)

砂が舞う土地に緑の森を 〜中国内モンゴル沙漠化事情 no.4

太陽をさえぎり、黄色い世界になる黄砂の猛威。                            文・B.セルゲレン 写真・片岡一史
                                                                  
太陽の光も遮断する大規模な黄砂

沙漠化によって、どういうことがおこっているのか。その大きなもののひとつが、黄砂の問題です。

以前、内モンゴルで私も大きな黄砂を経験しました。

その時は、日本車に乗っていたのですが、台風の目のような黄砂の中心が通り過ぎるまで、とても怖くて、車を止め、ただひたすら、通り過ぎるのを待っていました。黄砂の中心では、太陽の光も遮断され、真っ暗になるのです。砂の中にいるように感じるぐらいです。通り過ぎた後は、車に2〜3センチぐらい砂が積もってしまい、ほうきのようなもので払い落としてやっと出発できました。

私は密閉性の高い日本車のなかに避難できたからよかったのですが、外で大きな黄砂にあったら大変です。洋服で顔を覆い、砂を吸わないようにしてゲルや建物に逃げなければなりません。2008年の大規模な黄砂では、モンゴルで十数名の死者が発生したほどです。大規模な黄砂では、外にいると砂で呼吸もできないぐらいになりますから、死者が出ても当然といえます。

現地では、シャージンという砂よけマスクを持って外出するのが日常になりました。これは、細かな穴があいた頭巾のようなもので、頭からすっぽりかぶるようにできています。

また、シャーイェン(砂眼)と言って、目が赤くなる病気にかかっている人もかなり多くいます。目だけでなく、鼻炎になったり、肺や器官系をやられてしまう人も多いようです。

大人でも被害を被っているぐらいですから、毎日、学校に通わなくてはならない子どもたちは、なおさら大変です。



数多くの生き物に被害を与える

黄色い砂。黄砂を経験すると「黄色」というのがよくわかります。飛来するのは、「ほこり」と言ってもいいぐらい、非常に小さな粒の砂なのです。この小さな粒、黄砂は、家畜や農業、交通機関にも被害を与えています。

家畜が黄砂を吸ってしまうこともありますが、エサが砂にうずもれ、家畜がそれらを食べてしまうこともよくあります。種馬や種牛のように、貴重な家畜は、手術で胃を洗浄することもあるほどです。

農業も田畑に砂が積もったり、灌漑設備に砂が詰まってしまい機能しなくなることもあります。

列車も、砂によってガラス窓が粉々にくだけてしまったり、飛行機のエンジンの中に砂が入り込んで動かなくなることもあります。

これらは黄砂の発生源に近いほど顕著に見られます。

発生源が広くなっている

20世紀前半、1950年代ぐらいまでは、ゴビ砂漠や大きな沙漠の周辺地域から、2年に1回ぐらい大規模な黄砂が発生する程度でした。

しかし現在では、発生する地域も広く、回数も多くなっています。1年に20数回発生する年もあります。また、季節を問わず発生するようになりました。

日本でも、昔は、九州や本州の北部、北海道などで、春に観測されていた黄砂が、今では、他の地域、季節にも飛来するようになっています。

昔の黄砂は、偏西風によるものが多かったようですが、現在は、そうとは限りません。内モンゴルなど、沙漠化によって沙地となった地域の砂を巻き上げ、森などの抵抗もありませんから、勢いを増し、さらには、中国沿岸部の大気汚染物質を巻き込んで、遠く、朝鮮半島、台湾、日本に飛来しているのです。

昔は、自然現象は自然の中で解決できていたのですが、今では、人間の環境破壊により、その抑止能力が低下し、とどまることなく猛威を振るっているという印象を持っています。


PROFILE   B.セルゲレン
中華人民共和国、内モンゴル自治区出身。内モンゴル沙漠化防止植林の会代表。
1994年より日本に留学し、東北大学、東京大学に通う。
政治学を学ぶかたわら、自らの故郷であるホルチン沙漠の植林活動を積極的に推進。

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